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5話 ページ7

お風呂に入り終わり髪を拭く。


これから寝るまでが私の自由時間だ。


いや別にこの時間しか自由にできないわけじゃないけど。


特に何かしたいと思っていなかったので何となくYoutubeを起動する。


別に好きなYouTuberもいない。


そもそも動画というものをあまり見なかった。


せいぜい好きなゲームのプロモーションビデオを見るくらいだ。


だからこれは本当に偶然なんだ。


私はしばらくおすすめ動画の一覧をぼーっと眺めていた。


するとその中に気になるものを見つける。


夢「青い鬼実況?」


そのゲームはひたすらに青い鬼から逃げてステージから脱出するというものでこのゲームをいろいろな人が実況しているのも知っている。


見たことは無いけど。


まさかおすすめに実況がでてくるとは思ってなかったのでとても気になった。


ふとその動画の投稿主のアイコンが目にはいる。


夢「…なにこれ」


そこにはピンクの背景にお世辞にも上手とは言えない黒い猫…猫なのこれ?


まぁよく分からない動物が描かれていた。


…別に人の感性はそれぞれだからいいか。


さっそくイヤホンを着けて動画を再生する。


投稿主だと思われる男性の声が聞こえてきた。


『うぃーすどうもキヨでーす』


その瞬間私は衝撃を受けた。


あの頃よりもだいぶ低くなった男らしい声。


でもとても聞き覚えのある愛しい声。


大好きな彼の声を私が忘れるはずはなかった。


夢「拓也…!!」


私の目からは涙が溢れた。


私はすぐさまその実況動画を閉じる。


そして本人が登場しているもの、いわゆる実写動画を探した。


検索し上にでてきたチャンネル登録者200万人突破記念動画を再生する。


『どーも皆さん、キヨです』


絶対に見ることも叶わないと思っていた彼が画面の向こうにいる。


中学生の頃よりもとても背も伸びて襟足も赤く染めてまるで別人のように感じる。


でも笑い方が昔と全く同じだ。


彼は私の知ってる拓也のまんまだった。


この動画を号泣しながら見てる奴なんて私以外にいないんだろうな。


あぁどうしても涙が止まらない。


私の心の中にあった彼との記憶が溢れ出そうだ。


会いたい。


そんな事を思ってしまうくらいに。


でも今の私は『私』じゃない。


拓也にとってはただの他人。


そんなの分かってる。


だからせめて。


今の貴方(キヨ)を追いかけさせて。


私はしばらく一人で涙が涸れてしまいそうなほど泣いていた。

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作者名:緑宮 瑠理 | 作成日時:2019年12月22日 0時

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