12話 ページ14
キ「兄妹仲良いんだな」
低く鋭い声が響く。
声の主は拓也だった。
レ「…キヨ君。なんか怒ってない?」
キ「怒ってねぇよ」
レト兄が私から離れ拓也に話しかけた。
だけど彼は低い声のまま返答した。
なんで怒ってるの?
私何かした?
夢「…私、なにかしちゃいましたか…?」
拓也が怒っている所は見た事がなくて恐る恐る聞いてしまう。
私が泣きそうになっていると勘違いしたのか彼は急に焦った顔になった。
キ「い、いや何もしてねぇから…ほんと何もしてねぇから!気にすんなよ!」
そう言われて頭を撫でられる。
私がさっきレト兄にしたような撫で方ではなく髪がくしゃくしゃになってしまうような撫で方。
これが彼なりの優しさなのかな。
そう思うと嬉しくなった。
ガ「…よーし!飲もう!今日はこのまま皆で飲もう!」
急にガッチさんが声をあげる。
牛「いいなそれ!じゃあコンビニでなんか酒とつまみ買って来るか」
夢「えっあの私…」
まだ成人してないです。
というか私ここにいていいのかな?
牛「あ、Aちゃん未成年だもんな。ジュースも買って来ねぇと」
夢「いや、違くて…」
私お邪魔になってないですか。
レ「気にすんなやA。むしろおっさんばっかりでつまらんからここに居てくれへん?」
レト兄が私の言いたい事を察してくれたのか嬉しいことを言ってくれた。
夢「…うん!」
私、居ていいんだ。
キ「…俺も久しぶりに飲もっかなー」
フ「いやお前禁酒は?」
…禁酒してたんだ。
どうしてだろう?
お酒飲んだらどうなるのかな。
酔っ払うと大変なのかな。
考えても全く分からない。
あぁそっか。
この瞬間私は痛感した。
『私は今の拓也の事を何も知らない』という事を。
キ「今日くらい別にいいだろ!あれ特に理由ねーし」
牛「いいんじゃね?たまには酒飲まないとな!レトルトは?飲む?」
レ「うーん…」
レト兄は難しそうな顔をしながら私の方を少し見る。
レト兄が家でお酒を飲んでいる所を私は見た事がない。
恐らく私に遠慮しているんだろうけど…
夢「レト兄も今日は飲んだら?牛沢さんの言う通りたまには飲んでもいいと思うよ!私は全然気にしないからさ」
そう言って私は笑った。
レト兄が安心できるように。
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作者名:緑宮 瑠理 | 作成日時:2019年12月22日 0時