27話 ページ28
「おはよーございます…っ」
言い切ったところで、思わずふわぁと欠伸が出てしまう。上から「相当お疲れさんやなぁ」なんて声が。
「あ…瀬良先輩おはようございま…ふぁ…」
「ははっ、寝不足なん？珍しいな」
ぐしぐしと擦ろうとする私の腕を"擦ったらあかんで"と軽く阻止しながらそう問いかける瀬良先輩。
「まー頑張れ、屋上でな」
「…はい」
瀬良先輩の応援もあってか、なんとか重たい瞼を持ち上げ踏ん張った午前。心なしか体が重い気がする。
いつにも増してしんどい階段を登り、重たい扉に体ごと押し当てて開ける。
「おーきたきた」
満面の笑みでこちらに手を振る瀬良先輩に、笑顔で返すことも辛い。あれ…なんでだろう…？
「なんか顔色悪ない？しんどそうやな」
「大丈夫です…多分」
"多分ってなんやねん、かしてみ"と瀬良先輩の大きな手が頬に当たる。
冷たい…気持ちい…
「あっつ、そんなんで午前やってたんか、そらきついわなぁ、今日はもう帰りぃ？」
そう言われ、体調が良くないのだと自覚する。あー…夜更かしするんじゃなかった。つら。
「上司に言って帰ります…うあっ」
ふらっと立ち上がれば、揺れる体、傾く視界。
きゅっと目をつぶると、来るはずの衝撃はいつまでも来ない。ゆっくりと目を開けば、目の前には瀬良先輩。
「すみません…ありがとうございます」
「危なっかしい、送ってく」
いつにもまして真面目な口調に、少し驚く。あの瀬良先輩が…？
「そんな顔せんでもええやろ、ほら行くで？」
腕を掴まれ、ゆっくりと来た道を戻る。
それすら辛くて呼吸が上がるけれど、いつもの瀬良先輩の歩幅より大分ゆっくりなスピードに、彼の優しさを感じた。
"'流石に俺、早退できんから、ごめんな"
会社の前まで来た瀬良先輩は、申し訳なさそうに言う。
「へへ、大丈夫ですよ、へっちゃらです」
にへら、と笑顔を作ると、軽く小突かれた。
「いてっ、なにするんですか」
「ばーか、しんどいやろ？無理すんな、誰かに迎えきてもらえ。先輩命令でーす」
「…はーい」
…というわけで、誰に来てもらおうか。
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作者名：なえ | 作成日時：2017年9月14日 17時
