第7話 ページ7
「ソロパートのレッスン厳しかったな」私は楽器を背負って、夕方、それも暗くなった夕方を一人で歩いていた。
熱中症でしんどくなった時、直ぐに帰りなさい、と言われたけど、私は音楽室に戻った。今帰ったら、先輩に何を言われるか分からないから。
レッスンの厳しい校外の先生は、私のソロパートを部活終わりに見てくれた。ダメ出しばかりされて少し悲しかったけど、ポイントはわかった気がする。
リズムを手で太ももを叩いて忘れないようにする。
公園に差し掛かると、清川先輩と中学生の女の子がサッカーをしていた。清川先輩は制服で、女の子はジャージ。
ここで練習しようと思ったのに。
この公園の周りには民家はないし、体育館と公民館とか施設があるだけで楽器の練習やダンスの練習をしている人がパラパラ居るような公園なのだ。
私は少し離れたところにいって、楽器ケースを開いた。組み立てて、息を吹き込む。
そう、ハンカチないから唾抜き困るんだよなぁ。どこに落としたんだろう。
楽譜を出して、膝の上に置く。楽譜にはさっき教えてもらったことが汚い字で書かれている。
「丁寧に」「ここから、盛り上げるように」「裏だからズレない!」
指でリズムを取りながらなぞる。コンクール前なのに、こんなレベルで大丈夫かな。すごく不安。
「あのさ、Aちゃん。これ」
私は、自分の目の前に男の人が立ったことに気づいて直ぐに顔を上げた。
「あ、っと、清川先輩」
清川先輩はハンカチを私に差し出して、何してんのと聞いた。汗で髪が首とおでこに張り付いている。
「コンクール前なので、練習に」
「すげぇ、それ、フルートってやつだろ?」
手で仰ぎながら興味ありげに私の側に来る。中学生の女の子も私のそばに来て、「キヨ兄、練習だろ!早く戻って」と頬を膨らませてやってきた。
「俺の後輩のなつみ。サッカーは俺の次にうまいやつ」
清川先輩はなつみちゃんの肩をパンっと叩いて、私を見てニカッと笑った。なつみちゃんは怒ったように私を見て、少し会釈した。
私は暑くて、返してもらったハンカチを口元に持っていった。清川先輩の匂いがした。
コンクールは全国大会に出場することが出来た。
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るち(プロフ) - 佳奈さん» いえいえそんな!?そんなに丁寧に読んでくれる方がいて嬉しかったです。また、よろしくお願いします! (2019年7月24日 21時) (レス) id: e1f6fd326e (このIDを非表示/違反報告)
佳奈(プロフ) - コメ返、ありがとうございます!はい、もう一度読んで見ます!!ありがとうございました!他の作品も読みます! (2019年7月24日 20時) (レス) id: 126972c2b9 (このIDを非表示/違反報告)
るち(プロフ) - 佳奈さん» 佳奈様、コメントありがとうございます。人物に注目して読むと読みやすいかな.......と思います。ご迷惑おかけしました<(_ _)> (2019年7月24日 13時) (レス) id: e1f6fd326e (このIDを非表示/違反報告)
佳奈(プロフ) - うーん、、?解説してくれませんかね? (2019年7月24日 10時) (レス) id: 126972c2b9 (このIDを非表示/違反報告)
佳奈(プロフ) - ?? (2019年7月23日 20時) (レス) id: 126972c2b9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:るち | 作成日時:2019年7月15日 11時