これをきっと恋と呼ぶ【轟焦凍】 (ページ37)

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瞬く間に噂は広がっていった。食堂でご飯を食べたり、偶に屋上に行ったり。

誰とも群れず、話すこともなかった雄英の華が一年のヒーロー科であり体育祭2位の男と仲睦まじくしていれば噂は尾鰭を付けて飛び回るものだ。

たけど彼女は気にする様子もなく、毎日綺麗な竜胆色の瞳を細めて笑っていた。
偶に彼女と出掛けたり、勉強をしたりと彼女で埋め尽くされた日々を送ることに焦凍自身とても満足した充実感と多幸感を感じていた。

「してみたかったの、お勉強会ってもの」

「試験近いからな」

図書館では声を上げて喋ることも叶わないため、誰もいなくなった放課後の3Aの教室で机を隣り合わせにしてテキストを開いていた。

風がぺらぺらとテキストを数枚拐っていくから彼女は少し小さな文句を言いながらも嬉しそうにページを片手で押さえていた。

睡蓮のような美しい手がページをめくり、シャーペンを握り、消しゴムを動かす度に焦凍はひとつひとつに目を奪われて自分の手を止めてしまっていた。

自分が彼女に抱いている気持ちがなんなのか。
流石に高校生にもなって気付いていない筈がなかった。

だけど、彼女はなる気がなくてもヒーロー科であり自分は彼女よりも二年も遅くに入ったヒーローの卵。
追わなければいけない背中はまだ見えておらず、自分のビジョンも立っていない。

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