これをきっと恋と呼ぶ【轟焦凍】 (ページ35)

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「な、に？」

「太腿にあった痣、今は治ってるけどどうしたんだ」

「家に帰る前に蓮の姿になって帰るのが暗黙の了解ってやつなんだけど、Aの姿で帰るとお母様が蓮を返してって暴力を振るうの、… 大丈夫よ、そんな顔しないでよ」

焦凍自身、自分が置かれている家庭環境に満足いかず納得もできず苦しんでいたが、彼女の家庭環境はそれを上回るものだった。

壮絶過ぎる彼女の過去。

そんな大き過ぎる過去を彼女は十年以上も1人で誰にも言えず抱え込んでいたのだろうか。
そう思うと自分のことのようにキリキリと胸が締め付けられた。

「 … 私は望まれてないの。なんで生きてるかなんて、やっぱりわかんないの。」

唯一の兄弟を5歳の頃に亡くし、母親には自分という存在を消された。
彼女は兄が亡くなった寂しさに浸ることもできず、兄として生きることを選ばせられた。
5歳で心を殺されてしまった彼女の痛みは計り知れない。
わかってあげたくても、わかってあげられない。

「俺の家庭事情、知ってるか？」

一呼吸おいてふるふると首を横にふる彼女を横目に、重い口を開いた。

この話をしたのは緑谷にだけだった。
でも彼女には聞いて欲しいと思ったんだ。

彼女と自分の家じゃ重みも何もかもが違うけど、家庭のことで悩んでいるのはAだけじゃない。身近なところにも悩んでいる人はいるということを知ってもらいたかった。

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