これをきっと恋と呼ぶ【轟焦凍】 (ページ29)

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お手伝いさんがその電話を手に取るのを物陰から見つからないようにひっそりと盗み見していた。

「はい、糸累でございます。はい、 … え？」

正気の色を失ったように青ざめていくお手伝いさんは目を見開き、震える声で母親を呼んだ。
一刻を争っているような焦った声だった。
母親と父親がぱたぱたと駆けてきてお手伝いさんから奪うように受話器を耳に当てる。

数秒後、ぶらりと受話器は宙をきった。

まるで魂が抜けてしまったかのように立ち尽くす母親。父親は泣いていた。

「おか、さま … 」

ギロっと私たちに似た顔の母親に見つめられ、後退りしてしまうほど母親は戸惑い現実を受け止めれていなかった。
蓮が亡くなった現実を。

「どうしましょう、蓮 … 目を離した隙にAちゃんが外に出て死んでしまったの … 悪い母さんよ、でも貴方がいてよかったわ … 」

母親の狂気じみた雰囲気に、私は蓮じゃないとはいえなかった。
ここまで私は愛されていなかったのだと実感してしまった。

「おい、死んだのはAじゃない。蓮だろ」

「なに言ってるの、貴方 … 蓮はここにいるじゃない」

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