光の温度１

４５．返事 ページ45

屋上は、内田さんとの思い出の場所。


落ち込んでいた時、屋上に連れ出してくれて、励ましてくれた。


本当に嬉しくて。


気持ちも切り替わったし、それまで以上にリハビリに対して前向きになれた。


ここで内田さんとの最後を迎えられるなんて、幸せだよ。




時間通りに着くと、内田さんはもう来ていた。



「早いですね。」


「うん。」


「遅刻魔って噂だったのに、内田さん、待ち合わせのときはいつも早かったです。」


「そうだっけ。」



なんかもう、色々と思い出してきちゃうな…。



「ここ、最初連れてきたとき、お前落ち込んでたよな。」


「はい。でも、ここで景色見て、空見て、話聞いてもらって…ってしてたら、色んなことどうでもよくなっちゃいました。サッカーやれればそれでいいって。…そうやって、ずっと、内田さんに救われてきました。」


「…。」


「内田さん、準備できました？」


「(笑)」



私は、大丈夫です。


内田さんとの、最後の思い出だもん。


笑顔で聞こう。



「じゃーいきます。」


「はい(笑)」


「俺さ、Aのこと、最初はただトレーナーが一緒だったから、気にかけてただけだったんだ。でも、お前色々悩んで、落ち込んじゃったりしててさ。何かいつも、ほっとけなくて。」



…うん。



「けど、ちょっと励ましたらすぐ元気になって。お前ほんと素直だよな。頑張り屋で、純粋で、真っ直ぐで、すげー可愛かったよ。」



笑顔って決めてたのに、こみ上げてきちゃう…。



「…でも多分、俺がAに元気貰いたくて、一緒にいたんだ。面倒見てる振りしてさ。お前といると、いつも楽しくて。」



内田さん…。



「昔の自分とかも思い出してたよ。レギュラーになりたくて必死になってた頃とか、先輩に追いつきたくてあがいてた頃とか。俺、死に物狂いでやってたなって。色々と葛藤しながら、乗り越えたりしてた時もあったんだよ。」



私だけじゃないんだね…。



「そんな純粋だったころの気持ちも、思い出したりしてた。だから…俺も、Aに会えてよかった。」



もう駄目だ。



「お前は俺がいてくれたからって言ってくれたけど、俺もお前がいたから、リハビリも辛くなかった。毎日一緒にいてさ…。正直、お前が今日からいなくなるの、寂しい。」



一つ一つの言葉が胸に染み入っちゃって、耐えられないよ…。


内田さんに、そんなこと思って貰えるなんて、私の初恋は、成就するより素敵なものかもしれない。

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