光の温度１

１２．居場所 ページ12

「…俺、Aのプレー、テレビでだけど見たことあるよ。レバークーゼンの試合。」

「えっ？」

「お、日本人じゃんと思ったら、同じ右サイドバックで。粗削りだけど、良いプレーすんなーって思ってた。」


私のこと知ってたんだ。

まさかプレーを見てもらったことがあるなんて。


「技術なんてどうとでもなるよ。若いんだし、まだ成長時。それだけ向上心もあるんなら、まだまだ伸びるんじゃない？」

「内田さん…。」

「居場所だって、また作ればいいだけの話。仕方ないじゃん、離脱したのは現実なんだから。戻ってから、どれだけ自分がやれるかが問題。」

「…。」

「まぁでも、戻ってからのことは戻ってから考える。今はリハビリに集中。先のこと考えて、今をおろそかにしちゃ、むしろ後退しちゃうよ。」

「そうですよね。」

「俺の方が長期間だから。気持ちは早まるけど、今は我慢時。」


そうだ。

内田さんの方が重傷だ。

私が来る前からいるのに、予定では終わるのも内田さんが遅いもんね。

しかも内田さんはシャルケでも日本代表でもレギュラー。

背負ってるものも、私より何倍も大きい。



あせっちゃ駄目だって分かっていたのに、ハイペースになってたな。

みんなのあんな姿、見ちゃったらね。

でも、今やるべきことをきちんとやろう。

それが今後につながる。



私の選手人生は、まだまだこれからだもん。

ゆっくり治そう。

プログラムどおりにやれば、予定通り終わるんだ。

早まったって、いいことない。

予定どおり終わらせて、チームに戻って、また一から頑張ればいいんだ。



リハビリが終わればトップチームへ戻れる。

セカンドチームから這い上がった私がだ。

あの頃に比べたら、トップチームへの道が決まっているこの状況は、すごく幸せだよね。



内田さん…、優しいな。

心配して、声かけてくれたんだ。

自分だって、大変だろうに。

ありがたいな。

ただ、サッカーが上手いとか、日本代表とか、すごいチームに所属してるとか、それだけじゃなくて、あんな風に人間的に素敵だから、人気なんだ。


すごく…分かる。


素の内田さん、もっと知ってみたいな…。

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