スポーツ日和 2 ページ9
ここまでは良かった。
「そのまま、どちらかが背中で相手を支えるように持ち上げてください」
冷や汗が流れる。思わず解こうとする腕を、忍はガッシリ組み直して逃さないようにしてくる。
くっつく背中から小刻みな震えが伝わってくる。
笑っている…今の私には悪魔の笑いとしか思えなかった。
「ま、待って、私、潰れちゃ…」
「大丈夫。持ち上げてやるから」
「ま、待っ…ひゃあぁぁあ!」
ぴったりくっ付いた忍の背中が私の背中を誘導するように仰け反らせ、景色が青空に変わった。
「無理怖い!下ろして!」
身長差で足なんてとっくに地面から離れてる。
じわじわと忍は前へ倒れていく。
このままいくと重力で頭から落とされちゃうんじゃないかと怖くなり、体育の授業中ということなんてすっかり忘れて半泣きになる。
「…やっぱり重いな。腰痛めそう」
この一言に涙も引っ込んだけど。
はあ〜〜疲れた〜〜と言いながらゆっくり下ろされる。
私はその倍以上疲れた気がする…。
「はあ…生きてる……」
ちゃんと足がついているか地面を確認してしまう。
「ごめんって。面白くってつい」
しゃがみこむ私の頭をポン、と撫でる。
「やっぱり学校来てよかった」
微笑みながらそう言われてしまうと、何も言えなくなってしまう。
差し出された手を取って立ち上がる。
「この調子で、テニスも頑張ろうな」
優しげな微笑みは悪戯を思いついた悪っぽい笑いに変わる。
手を掴まれたまま、ズルズルと倉庫の方へ引っ張られる。
「ダブルス組んで試合出ようぜ。でもその前にお前を特訓しないとな」
少し強めに握られた手から、逃すまいという気持ちが伝わり、私も諦めた方が良さそう。
忍の鼻歌を聴きながら空を見ると、6月には似合わない宇宙が透けたような真っ青な空だった。
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ももこ(プロフ) - りさん» り さんコメントありがとうございます!最近あまりここに来ないので完結してるやつ公開しますね! (2020年6月14日 20時) (レス) id: 76860029bd (このIDを非表示/違反報告)
り(プロフ) - 短編集めとても面白かったです!ももこさんが良ければ他の作品も是非公開していただきたいです! (2020年5月14日 16時) (レス) id: c14adf3578 (このIDを非表示/違反報告)
ももこ(プロフ) - 五一ミリアさん» ありがとうございます!本当に嬉しいです……!秘密会議!は合作の話し合いの場で、未定はまだ何も書いていないんです(;_;)ハロウィンのやつ公開させてもらいますね! (2018年3月18日 20時) (レス) id: 9ec7cb08ca (このIDを非表示/違反報告)
五一ミリア - すみません『秘密会議!』と『Halloween*SweetNight』と『未定』のパスワード教えてください。 私ももこさんと作品もっと読みたいです。 (浜田組が読みたいです。) (2018年3月4日 0時) (レス) id: 60e64b8716 (このIDを非表示/違反報告)
五一ミリア - ももこさん尊敬します。私は、探偵チームKZのファンです!短編集めを今日読んだのですが…ハマってしまいももこさんの作品すべて今日一日で拝読させていただきました。私は、まだまだ未熟ものですが、ももこさんの作品は、素晴らしいものだと思います。 (2018年3月4日 0時) (レス) id: 60e64b8716 (このIDを非表示/違反報告)
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