Until I hear your name (ページ9)

今日:39 hit、昨日:126 hit、合計:26,134 hit

８ページ9

「俺、あいつのそばにずっといれると思ってた。

そんな保障は全然なかったのに。」

湧くんは私に背中を向けた状態で話し始めた。

湧「俺に出来ることはありのままを受け入れることだって思ってた。

でも、違った。

あいつは...変えて欲しかったんだなって。

俺にはあいつを変えれる勇気なんてなかった。だから離れたのに、また勝手に好きになって悲しくなってる。ほんと、勝手だよなぁ。」

弱々しい声音で話す湧くん。

その声を聞いて、あんな質問しなければよかったなんて思った私。

もう話さなくていいから。

こっちを向いて。

今あなたはどんな顔をしてるの？

『...諦めることも、相手のありのままを受け入れることも、相当な勇気を使うことだって、私は思うよ。それができる湧くんもすごいよ。

その子が変わることが出来たのは絶対に湧くんがそばに居てくれたからだよ。受け入れてくれる人がいるっていう安心があったからなんだよ。

だから、自分がいらなかったみたいな言い方、しないで。』

大きな彼の背中に引っ付き、鼻をすすって涙を流す私は、なんて無力なものなんだろうか。

なんでこんな醜い私にも優しくしてくれる湧くんが報われないの。

体と愛想を売ることしかできない私に、「自分の体は大事にして」なんて言ってくれる人だよ？

こんなの、おかしすぎるよ。

すると、湧くんが私の方に向き直った。

吸い込みそうな大きな目が、私を見つめ、なんだか緊張感がはしる。

すると湧くんの顔がふにゃりと笑顔をうかべ、私の頬に伝った涙を指で拭った。

湧「ありがとう。今の言葉、相当嬉しいわ。」

そして、ぎゅーっと胸に顔を埋めてくるから、しばらく頭を撫でていると、寝息がスースーと聞こえてきた。

本音が言えてスッキリしたのだろうか。

でも多分、このことはまだ引きずるだろうな。

湧「...A...。」

小さく聞こえた女の人の名前を聞いて、そう思った。