Until I hear your name (ページ7)

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私たちのもっと重くなった空気を取り払うかのように、鍋が大きくグツグツと音を立て始めた。

急いで火を小さくして、おたまでかき混ぜる。

湧くんはお皿やスプーンを用意し、2つのコップにお茶を入れていた。

ふわりとシチューのいい匂いが香る。

湧「お、いい匂いじゃん。」

私の横ですんすんとシチューの匂いを嗅ぐ湧くん。

その私はというと、湧くんの服の柔軟剤の匂いとシチューの匂いが混ざった香りが鼻をくすぐる。

火を止めてお皿によそって、テーブルの上に並べる。

その様子を見て、湧くんは律儀に食べるのを待っている。

『先に食べちゃっていいのに。』

湧「いや、一緒に食いたいでしょー。」

湧くんって、優しいな。

普通男の人は女の人より先に物事をする人が多いのに。

ちょっとこっちのペースが乱される。

湧「リリちゃん？」

私が無言で突っ立っていたので、湧くんが心配そうに名前を呼ぶ。

いや、名前というか本名ではないんだけど。

『ごめんね、ぼーっとしてた。笑』

湧「じゃあ早く食べよ。冷めちゃうから。」

湧くんはシチューをスプーンでかき回している。

伏せているまつ毛が長くて羨ましい。

椅子に座って、私たちはやっとシチューを食べ始めた。

久しぶりに食べたけど、やっぱり美味しい。

湧「お、うまぁー！！」

『うん。美味しいね。』

美味しそうに目の前でパクパク食べる湧くんを見てたら、自然と食欲が湧く。

本当に表情豊かな子だな。

私のために怒ったり、こうやって美味しそうにほころんだり、真剣な顔になったり。

他にどんな顔をするのか、見てみたいかも。