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お得意様、湯島さんの話を聞いていると、今日は仲間の結婚式に行ってきたそうだ。
皆ワイワイとその話で盛り上がっていた。しかしその中で、湧くんだけが浮かない顔をしていた。
もしかして、体調でも悪いのかな。
『わーくくん、大丈夫？』
湧｢え、あー。大丈夫っす。｣
『そう？体調悪かったらいつでも言って。湧くんの分のお酒、私が飲むから。』
少しお姉さんムーブをかますと、湧くんは少し笑った。
『今日結婚式行ってきたんでしょ？どーだった？』
湧｢んー、綺麗でしたよ。｣
ほら、と写真を見せてくれた。
純白のドレスに身をまとった綺麗な女の人。
てっきり新郎の方に招待されたのかと思ったら、どうやら違ったらしい。
幸せそうな笑顔で笑う写真の中の女の人。
それとは反対に、湧くんは寂しそうな顔をしていた。
すぐに分かった。
この子のことが好きだったんだなぁって。
いや現在進行形の方が合ってるかも。
『いいなぁ、私もウエディングドレス着たーい！湧くんが着せてくれない？』
湧｢からかわないでくださいよ。笑｣
少しでも表情が明るくなって欲しくて、いつものおちゃらけた調子で言った。
湧くんは困ったように眉を下げて笑った。
ちょっと調子が狂う。でも、なんだか放っておけない気がした。
一通り飲んだところで、そろそろ出ることになった湧くんたち。
｢あ、リリちゃん。｣
湯島さんに呼ばれて、すぐに駆け寄るとコソッと耳打ちをされた。
｢アフターお願いできる？俺じゃなくて、湧の。お金は俺が払うから。｣
湯島さんは財布から1万円札を取り出して、私の手に握らせた。
基本的にアフターは時給は発生しないけれど、お客さんからタクシー代をもらうことが多い。
けど、私はあまりもらわないようにしている。
『いや、受け取れないです。私、いつも湯島さんにたくさんお酒飲まさせてもらってるし。』
｢いいから。これであいつの浮かない顔をどーにかしてくれ。｣
サングラスの隙間から見えた湯島さんの目は、たしかに優しい目をしていた。
...じゃあこのお金で、何か湧くんに買っていってあげようっと。
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作者名：ゴンザレス | 作成日時：2024年2月28日 21時
