Until I hear your name (ページ15)

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赤い顔のお得意様の方に向かう。

ボーイは私を見つけては、怯えた表情をしていたのでとりあえず裏に行くよう合図した。

お得意様はご乱心のようで、強引に腕を回してきた。

あー、これやばいやつかもな。

＜おせーんだよ！！何他の客の相手ばっかしてんだ！？こっちは貢いでやってんだよ？＞

『あー、ごめんなさい！じゃあこちらどうぞ！』

とりあえず他のお客様の迷惑にならないように、個別の席を用意してもらって、そこに案内する。

笑って案内してみたけど、機嫌は直らないみたい。

席に着いた途端に、後頭部を引き寄せられて、お客様の顔が至近距離まで近づいた。

とっさに相手の肩を押し抵抗すると、またお客様は怒った顔をした。

＜何逆らってんだよ？お客様は神様だろーが！＞

怒鳴り声が店内に響き、皆の視線が私たちに向けられる。

これ本格的にやばい男だ。ボーイさん呼ばないと。

呼ぼうとしたその時、男は私に覆いかぶさってきて手首を強く掴まれ、身動きが取れなくなった。

『ちょ、やめて！！いたい！！！』

＜はぁ？笑

お前アフターの時同じことして喘いでたよな？！あぁ！？＞

怖い、怖い怖い、助けて。

そんな恐怖が私を襲うけど、

これは私が片付けないといけないことなんだ。

だって私がまいた種、お客さんだもん。

あぁ、これってもしかしてすべて私がやった"ワルイコト"が返ってきてるんだな。

なんで私、こんな不器用なことしかできないんだろう。

なんでこんな、汚いマネしかできないんだろう。

＜なぁ？聞いてんのか、おい！！！＞

半笑いで私の首を締めてきた。

苦しい、苦しい。

こんなに緊急事態なの、初めてかも。

「リリ。」

そう思った瞬間、店内に通るような大きな声で呼ばれた。

あの夜みたいに弱々しくなくて、芯の通っている声で。