23…過去 ページ23
一目惚れした時、あなたは喧嘩した後だった。
『いてて…』
幼い私は、今はもう無い勇気を振り絞ってあなたに声をかけてた。
『あの…大丈夫…？』
『ん……なに？』
『だって、腕から思いっきり血が出てるから』
『別に負けてないし…、転んだだけだし大したこと無いよ』
ムスッとそっぽを向いたあなたの表情は、強がりと意地っ張りを混ぜ合わせたような顔をしていた。
『…ちょっと待ってて』
『え？ちょ、おい！』
治してあげたいけど、子供の私にそんなチカラは無くて。
『いま、絆創膏とか持ってないから』
咄嗟に水飲み場の蛇口でポケットに入れてたハンカチを濡らしたのは、よく泰志の怪我も拭いてたからすぐに思いついた。
『……』
傷の周りに付いてた砂をはらい落として、血が出てる所を痛く感じないように慎重に拭いていた。
その間、あなたはじっとして、私が傷口を拭くその光景を眺めてたね。
『多分、これで大丈夫』
あの時、あなたは何を思ってたの？
『……お前は言わないんだな』
『なにを？』
『喧嘩したらダメ、とか…。ほかの女子はよく言ってくるけど』
『だって私男じゃないもん』
泰志とずっと一緒に居たから、分かるようになってた。
男子と女子とじゃ、何もかも違うって。
『は？』
『男の世界とか、てっぺんとか、私わからないもん。分からないのに口出しされるの、やでしょ？』
『そりゃ…まあ』
泰志はすごく嫌がるから私はしない。でも、あなたはどうなんだろうって気になった。
『喧嘩したらダメなんて言わないけど、怪我は減らした方がいいかもね』
告白なんてものを知らなかった幼い私は、少しのお話で心が満たされていたから、名前を聞くことも忘れて“じゃあね”と手を振って帰ろうとしていた。
そしたらあなたが声を掛けてくれたの。
『怪我したら……、また手当してくれるか？』
あの時、普通の女の子のならきっと上手く返事が出来てたんだろうけど。
私はこの時ばかりは“あの”泰志の妹であることを恨んだ。
『負けて泣きついてくるなら良いよ？』
悪戯心と好奇心とほんの少しの照れくささが、私の心に傷を作るなんて思わなかった。
『だ、誰がお前みたいな可愛げ無い女に泣きつくかよ！』
あなたのその一言がずっと心に残るくらい、私はあなたを好きになってた。
好きな相手の言葉だから、今もずっと引きずってる。
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ポウ(プロフ) - 面白くて、何度も何度も見返しちゃいました！続き待ってます！ (1月15日 16時) (
レス) id: 4b00597d9c (このIDを非表示/違反報告)
和娘米(プロフ) - まやさん» コメントありがとうございます！いずれ完結させたいと思っているので、気長にお待ちいただけたら嬉しいです！感想もありがとうございます！ (2023年2月3日 13時) (レス) id: 9f59f27616 (このIDを非表示/違反報告)
まや(プロフ) - 更新はしますか？楽しみにしています(*^^*) (2023年2月3日 1時) (レス) id: 507db5b736 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：和娘米 | 作成日時：2022年11月28日 22時
