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「わっ、花火始まった！ けっこー綺麗じゃん！」
片手にビール、片手にだいちゃんの手。
神社の境内に座って、そんな状態で花火を眺めていた。
「だ、ね。綺麗だね……」
ああだめ、横、見れない。
さっきのキスから、痛いぐらいに心臓が鳴ってる。
「……いのちゃん？」
「ほぇ、あ、なに？」
ぴと、とビールが頬に当てられる。
熱を持った頬に、それはひんやりと染みていった。
「顔、真っ赤。りんごみたい。……そーゆう顔すると、またキスしちゃうよ？」
「うっ、うっさい、ばか！」
浴衣の袖が、繋いだ手にたまに当たる。
くすぐったい。……だいちゃんにされること、なにもかも。
ずっと考えてた。
キス、されても、いやだと思えなくて。
手、繋いでも、いやだと思えなくて。
それって、ねぇ、恋じゃないの？
「……だいちゃん、」
「ん、なに？」
繋いだ手は、昔みたいにふにふにでもなくて。
声も、大人っぽくて、誰よりも格好よくて。
顔は、昔から格好よかったけど、今は比べ物にならないぐらいで。
……だいちゃんの知らないところ、もっと知りたいって思うんだ。
「……好き、」
どーん、とオレンジ色の花火が群青色の空を彩った。
「ごめん、花火で聞こえなかった。今、なんて……？」
「……んーん、なんにも。花火、綺麗だね。」
「ん……？ うん、」
色とりどりの花が咲き誇る空の下で、
どうか、手から早くなった脈拍が伝わってませんように、って
それだけをずっと願っていた。
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作者名：鎖空
| 作成日時：2017年6月28日 21時
