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「ふぇ、え、ちょっ、」
だいちゃんの腕の中に閉じ込められて、太陽みたいに安心する香りに包まれる。
……ああもう、こんなのスキンシップ程度のものでドキドキするものじゃないんだってば、
「俺、いのちゃんが好きだよ。」
「あ、あの、だいちゃん、」
「誰よりも大切にする。絶対に守ってあげるから、だから、付き合おう。」
耳元で響く声に、心臓がどくどくと脈を打つ。
違う、違うよ、いやだ、だって、
「言っとくけど、おれは、だいちゃんのこと好きじゃないから。…………だから、好きになるまで、ちょっとだけ、時間がほしい。」
そう、おれはだいちゃんのこと、好きじゃないもん。
だいちゃんのことを好きじゃないのに期待させて、付き合うとか、あり得ない。
「……うん。そーゆうとこも、いのちゃんらしくて好き。」
「……なんか、ごめん。」
「ううん、待ってる。」
嬉しそうに笑っただいちゃんは、窓の外を見て慌てて立ち上がった。
「やっば、雨降ってんじゃん、傘忘れたし。雨弱いうちに帰るわ、またねいのちゃん！」
「だ、だいちゃん、ちょっと……！」
雨弱いうちに、っていうかもうどしゃ降りだし。
でも、泊まってく？ なんて口が避けても言えないし。
「傘、貸すから。……はい、」
玄関から飛び出しただいちゃんを呼び止めて、傘を差し出した。
え、と驚いた顔をしただいちゃんは、傘の柄をおれの腕ごと引っ張る。
「……っだいちゃん！？」
ちゅ、と軽く唇に触れた感触は、感じる間もなくすぐに離れた。
「じゃーね、いのちゃん。また明日！」
雨の中を駆けていくだいちゃんの背中が、小さくなっていく。
違う、今のは不可抗力で、決して受け入れたわけじゃなくて…………
ぶんぶんと頭を降って、玄関のドアを閉めた。
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作者名：鎖空
| 作成日時：2017年6月28日 21時
