Don’t let me fall in love! (Ar×In) (ページ1)

今日:9 hit、昨日:19 hit、合計:155,095 hit

1.会っちゃったページ1

side K.I

「ふあぁ……ねっむぅ、」

平日のお昼過ぎ。
働いている寂れた珈琲店のカウンターでうとうとしていると、同じくここの店員、山田涼介が近づいてきた。

「伊野尾ちゃん、仕事中だからね？ちゃんと集中して。」

「はいはぁい、山田は真面目だねぇ。」

ぽかり、とつくった拳でおれの頭を叩き、山田は呆れた様子でため息をつく。

「店長も、なんでこんな人雇っちゃったのかな。」

「しょーがないね、年寄りだから。ってか、年下のくせに失礼だよねお前、店長に言うぞ。」

「あ、パワハラ。店長に言おっかなー。」

生意気な言葉を放った後輩は、カウンター内の椅子から立ち上がり、棚からコーヒーカップを取り出す。

「客いないけど。え、もしかしておれに淹れてくれるの？」

「なわけ。飲みたいなら勝手に淹れて。」

おれの愛用、白地に淡い青の猫が描かれているコーヒーカップをおれの前のカウンターに置き、山田は他のコーヒーカップを取り出した。

山田の愛用は赤で、白地に淡い赤の苺。乙女みたいな趣味してる。

取り出されたコーヒーカップはあと２つで、淡い橙色と淡い桃色のもの。

「え、まってまって。もしかして、お客さん来るの？」

「そうだよ、あと30分ぐらいかな。だから伊野尾ちゃんも準備して。」

「まじかー、客とか久しぶりじゃない？」

「いーから！ほら手動かす！」

カウンター用の布巾を渡され、背中を押された。ふつう、年上にこの仕事させる？

時刻は11時。
そのお客さんとやらは、お昼休みに立ち寄るのだろうか。

しょうがなくカウンターを拭いていると、コーヒー豆を用意している山田と目があった。