【明治東京恋伽】月夜と黒猫のワルツ (ページ9)

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森鴎外と菱田春草ページ9

貴「チャーリー……？芽衣ちゃん……？」

こ、困った……。こんなところに一人で……なんて考えられない……！！

ドンッ！

貴「うわぁっ！」

焦りすぎるあまり周りがあまり見えてなくてつい誰かとぶつかってしまった。

貴「ご、ごめんなさい」

？「ああ、すまなかった。大丈夫かい？」

貴「は、はい……」

私がぶつかってしまったのは赤い髪の白い軍服をきた男性。

差しのべられた手にどうするか一度迷いながらも、失礼なので掴まらせてもらった。

？「本当に大丈夫かい？怪我は？」

貴「大丈夫です。ありがとうございます」

？「そうかい？ならいいのだが…」

貴「？？」

なんか凄く見られてるような……？？

？「鴎外さん、なにしてるんですか」

すると赤髪の人後ろから黄緑の髪の青年が呆れたようにやってきて赤髪の男性に声をかける。

？「勝手にいなくならないでください。こんなところで放置されても困ります。」

？「ああすまない、春草。」

鴎外………春草………

どちらもどこかで聞いたことのある名前だ。

鴎「そう険しい顔をするんじゃない。なにか絵の題材になるような物はあったのかい？」

春「ここは空気が悪すぎます。目が痛くて絵の題材を探すどころではありません。」

鴎「おや、そいつは残念だ。たまには俗物に触れてみるのもいいと思ったのだがね。醜悪な要素も芸術には必要だろう？」

春「…また貴方は、公衆の場でそんな問題発言を…」

そこまで言ってから春草さんは私に視線を反らす。

春「…このご婦人は？」

鴎「うん、今知り合ったばかりなのだよ。丁度お茶にでも誘おうかと思ったところで、お前という邪魔が入ったというわけだ。」

春「…鴎外さん。貴方は相変わらず、前衛的なものをお好みのようですね。」

春草さんは私の姿をじっくり見たあと、げんなりしたように呟いた。

春「もう今夜は十分油を売りましたよね。長居は無用です。さっさと帰りましょう。」

鴎「こら、待たないか春草。全く、お前という奴は…」

そういってさっさと出口に向かっていく春草さんとそれを追いかける鴎外さん。

貴「……なんだったんだろ……」

まるで嵐でも通しすぎたの如く、その二人は私に大きな爪痕を残していった。