【明治東京恋伽】月夜と黒猫のワルツ (ページ47)

今日:3 hit、昨日:0 hit、合計:69,427 hit

ドレスを試着する。ページ47

次の日も、その次の日も。

鴎外さんのレッスンは過酷を極め、夜遅くまで続いた。

しかも、鴎外さんの教えかたが半端じゃなく上手い。

もし急に現代で英語の授業の講師をしろと言われても期待以上の講義を行えそうだ。

鴎「そうだ。注文しておいたドレスだが、もうじき仮縫いが終わるらしいので楽しみにしてくれたまえ」

貴「早いですね！？」

ドレス作りのためにフミさんに採寸してもらったのはそう遠い記憶じゃない。

鴎「お前の部屋の衣装棚にもドレスがかかっていただろう。あれは従妹が初めて鹿鳴館に行ったときに作らせたものなのだ」

貴「あの緑色のドレスですか？」

鴎「いかにも。おまえの寸法とは合わないかもしれないがよかったら袖を通してみなさい」

貴「えっ？いいんですか？」

私の借りている部屋の衣装棚………つまり、クローゼットにかけられていた一着のドレス。

とても高価な物のようだったので汚さないように細心の注意をはらってきたのだが………

鴎「できるだけドレスになれておいたほうがいい。それに、誰かが着てやればあのドレスも喜ぶだろうからね」

貴「そういうことなら………」

＿＿＿＿

ということで、レッスン後早速ドレスを試着させて貰ったのだが………

貴「短いなぁ……」

鴎外さんの従妹さんは大分小柄だったらしく、丈が少し短い。

貴「と………いうか………コルセットがぁ」

必死に一人でコルセットを装着しようとするが全く持って装着できない。

貴「もういいや………諦めよう」

そして本番はフミさんにお手伝いしていただこう。

鏡の前まで歩み出る。

貴「へぇ……やっぱり綺麗なドレスだよねぇ…」

私よりドレスの方が主役っぽい。
どちらかというとドレスに着られてる感が半端なかった。

＿＿＿コンコン

貴「はい？どうぞ？」

誰かが部屋をノックしたので、私は返事をする。
少しおいて春草さんが顔を出した。

春「ちょっといい？フミさんが、明日の夕餉は何が食べたいかって聞いて………」

貴「夕餉ですか？」

鏡から視線を春草さんへと向けると、目がぱっちりと合った。

春「っ！！」

貴「春草さん？どうかしましたか？」

呼び掛けても全く無反応。

春「………なんなんだ、君は」

貴「えっ？ご、ごめんなさい？」

なんでいきなりダメ出し食らったんだろ………。