猫を探しに ページ41
春「えっ？」
春「昨日のは………君が寝ぼけてたんだろ。
だいたい、なんで君が視えるの」
貴「それは………私にもわかりませんけど……」
確かな証拠なんて全くない。
でも、昨日の幻想的な雰囲気を放つあの猫はただの猫だとは到底思えなかった。
もしかしたら、タイムスリップの影響でへんな力を手にいれたのかもしれない。
貴「(なんて……まさかね)」
でも、その時。
「にゃあ」
貴「！？」
今、窓の外から確かに猫の鳴き声が聞こえた。
慌ててパッと窓をみる。
春「………なに。どうしたの」
貴「今、猫の鳴き声が」
春「？聞こえないけど」
聞こえない？そんな筈ない。
あんなにハッキリ聞こえたのに…………
貴「(物の怪だから……？)」
馬鹿げているかもしれないけど、そうとしか思えない。
まだ、今なら捕まえられるかも。
私は勢いよくサンルームを飛び出した。
外は既に日が落ちかけていて、周りの木々が赤く照らされている。
「にゃあ…」
貴「(やっぱりいる。この辺に)」
姿こそ見えないけど、鳴き声が確かに聞こえた。
いかなくちゃ。
何故だかわからないけど、誘われるように歩きだした。
＿＿＿＿＿＿
「にゃあぁ」
貴「っ……どこ？どこなの……」
猫を探し続けて歩いていたらいつの間にか商店街まで来てしまっていた。
これが幻聴だったら………
目に見えない物の声だけを頼りに歩くなんて危ない奴だと思われるかもしれない。
だとしてもここで立ち止まるわけには………
春「ねぇ。待ちなよ」
貴「えっ？」
背後から誰かに呼ばれ、振り返ると春草さんが駆けてくるのが見えた。
春「なんで急に屋敷を飛び出すの」
貴「だって……猫を捕まえなくちゃって」
春「……本気？」
春草さんは顔をしかめた。
春「君、本気で捕まえる気？というより、本当に見えてるの？」
貴「姿こそ視えないけど……でも鳴き声はハッキリ聞こえますし、近くにいる気配はするんです」
「にゃあ」
ほら、今でも。
私と春草さんを少し離れた位置からじっと眺めている。
そんな気がした。
春「じゃあ君は………魂依だっていうの？」
貴「………わからないです」
私は迷わずそう答えていた。
私は春草さんの絵を完成させてあげられるのなら『魂依』にでもなんにでもなってあげたい。
私の答に彼はしばらく黙ったままだった。
きっと混乱してる。
それは人の感情に鈍感な私でもわかった。
「やぁ、春草と子犬ちゃんではないか」
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