【明治東京恋伽】月夜と黒猫のワルツ (ページ26)

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突然の婚約者宣言ページ26

いそいで俥を呼んで神田にある鴎外さんの屋敷に向かう。

あぁ……こんなに遅くなっちゃって……迷惑かけちゃっただろうな……

数十分してやっと鴎外さんの屋敷にたどり着き、お金を払って急いで中に入った。

貴「ご、ごめんなさいっ！遅くなりましたっ！」

慌ててサンルームの扉を開けてこれでもかっ！ってくらいの勢いで謝った。

鴎「やあ、遅かったではないかっ。心配したのだよ、A！」

貴「ほ、ホントにご迷惑をおかけしたようですいませ(ギュッ………ふぇ？」

いきなり体に温もりを感じる。
目の前には真っ赤で綺麗な髪がゆらゆらと私の息にあわせて揺れていた。

………ってこれ！だ、抱き締められてるっ！！！？

そう脳が判断するのに8秒もかかった。

貴「お、鴎外さんっ！？」

わ、私には芽衣ちゃんという将来を約束した人がっ！！！←

鴎「全く、心配をかけさせて！お前の身にもしもの事があったら、僕はこの先どうやって生きていけばいいと言うのかいっ？」

貴「っ！」

普段、あまり男の人を意識したことはないが、鴎外さんの真剣な表情に思わずドキッと心臓が跳ねたのがわかった。

貴「よ、酔ってます……？」

鴎「酔ってなどいない。何故なら僕は酒を好まないからだ。」

だとしたら、抱き締められる理由が思い付かないっ。

？「まあっ、なんてことでしょうっ！？」

すると私達をみて一人まるでこの世の終わりかのような顔をする女性が。
どなただろうか………。というか鴎外さん。ちょ、ちょっと苦しくなってきたよ…？？

鴎「叔母さん…申し訳ない。さっきも言った通り、僕にはもう、心に決めた人がいるのです。
………そう、ここにいる彼女こそ！僕が生涯ただ１人と決めている、未来の妻となる女性なのですっ。」

叔母・貴「「え？」」

私がこのあとしばらくフリーズしたのは言うまでもない。

＿＿＿＿＿＿＿＿

鴎外「いやあ、唐突にすまなかったなあ。」

貴「ホント……何事かと思いました……」

まだ緊張してて上手く手足が動かない……。

鴎「僕の叔母が、そろそろ所帯を持てと口うるさいものでね。僕としても結婚はやぶさかではないのだが、今はまだそういう気になれないのだ。」

貴「なるほど……」

鴎「それでつい、丁度よく現れたお前に婚約者(フィアンセ)の代役を頼んだという訳なのだよ。僕に特定の相手がいると知れば、叔母も諦めると思ったのでね。」

……私じゃ無理じゃね？