【明治東京恋伽】月夜と黒猫のワルツ (ページ24)

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日比谷公園へページ24

しばらくのんびりと話し合っていると、そろそろ出ようという話になり立ち上がる。

鴎「そうだ。今夜は来客があるかもしれない。」

春「？どなたですか。」

鴎「僕の親族だ。どうせまたくだらない話をもってくるのだろうよ…」

鴎外さんは眉をひそめた。
なにやら嫌なことがあるのかもしれない。

鴎「そうだ春草、丁度いい。これから彼女を連れて観光案内をしてあげたらどうだい？」

春「無理です。まだ課題が残っているので。」

貴「お気遣いありがとうございます。でも大丈夫です。寄りたいところがあるので」

鴎「寄りたいところ？どこだい？」

貴「日比谷公園です」

鴎「ふむ。行くのは構わないが、日比谷だと移動するのに時間がかかる。これを持って行くといい。」

すると鴎外さんは懐からなにかを取りだし私に投げた。

空中を舞うなにかを私は慌ててキャッチする。

鴎「行きと帰りは俥を使いたまえ。帰り道はわかるね？」

貴「分かりますけど……こ、これ！お財布じゃないですか！？ダメですよ！？持っていけません！」

鴎「気にしなくていい。どうせたいして入っていないのだ。」

とはいうもののこの手にずっしり来る感じ…………。
これ中に結構入ってるんじゃ………

貴「ありがとうございます！いつか返しますね。」

鴎「それより、出来れば朧ノ刻になるまでは帰りなさい。いいね？」

貴「…朧ノ刻？？」

前も似たような事を聞いたことを思い出す。
朧ノ時とは一体なんなのだろうか。

鴎「日没から明け方までの時間だ。暗くなると、よからぬことを企む物の怪らに絡まれる可能性があるのでね。」

貴「も、物の怪っ！？」

春「物の怪なんて、普通じゃ見えませんよ。」

物の怪と聞いて肩を跳ねさせるが、春草さんは落ち着いてツッコミを入れてきた。

鴎「まあ、魂依でない限りはそうだろうなあ。だが、見えないからこそ危険だということもあるではないか。」

貴「わ、わかりました！出来るだけ早く帰りますっ！」

鴎「そうしたまえ。」

そこで二人と別れて私は日比谷公園へと向かった。

＿＿＿＿＿＿

車夫「はい、６０銭いただくよ。」

貴「ええっと……あ。これか。」

初めての明治のお金に60銭払うだけでも時間がかかってしまったが、どうにか日比谷公園にはたどり着けた。

貴「二人とも………無事だといいんだけど……」

そんな不安を胸に私は公園の入り口を通り抜けた。