【明治東京恋伽】月夜と黒猫のワルツ (ページ20)

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居候が増えたページ20

貴「……そういえば、鴎外さん…帰ってくるのが遅いですね……」

春「あぁ……もうすぐ来るんじゃない？」

ガチャ

鴎「ただいま戻ったよ。……おや？」

鴎外さんとぱっちり目があった。

私の格好をまじまじと見つめたかと思うとそのまま深く頷いた。

鴎「うむ。実によく似合っているよ。ただ、少し残念でもあるなぁ……」

鴎外さんは残念そうにこう続けた。

鴎「僕としてはさっきの前衛的な服装も色気があって悪くはなかったのだが………」

春「あんな女唐服で近所を出歩かれたら、神経を患っているのではないかと噂されてしまいますよ。」

おぉ、そこまで全否定されるのか……。
凄いな……現代の制服。

鴎「どんな服を着ようが個人の自由だ。たとえ褌一丁で外を歩いたところで、他人が文句を言う筋合いはないと思うが？」

春「…鴎外さんは自由すぎるんです。」

貴「それは……ちょっと………どうでしょう」

とりあえず苦笑いで交わしておくことにしよう。

鴎「それより子イヌちゃん。昼は空いてるかね」

貴「？？はい。」

鴎「よし。なら、昼食を食べにいこうではないか！何が食べたい？」

貴「えっ！？い、いえ！？そんな昨日一晩泊めて頂いただけでもありがたいのに……そろそろ支度をして出ようと思ってて………」

春「へぇ……てことは君。記憶が戻ったんだ」

貴「うっ！！………そ、それは………」

春草さんの素朴な疑問に言葉が出てこず困っていると鴎外さんは盛大に笑って見せた。

鴎「なら、しばらくうちに住みなさい。」

貴「えっ！？で、でも………」

鴎「なぁに遠慮することはない。僕がしたくてしてることだからね。なんなら、子イヌちゃんの歓迎会として皆で牛鍋でも食べにいこうか」

貴「え、ええっと……」

まずい。このままだとどんどん私がここに居候させてもらう話に………！

鴎「おや、もうこんな時間かい。では、そろそろ行ってくるのだよ」

貴「えっ！？ちょ、ちょっと！鴎外さん！？」

バタンッ

しまった扉に手を伸ばした状態で固まる私。

春草さんは気にした様子もなく新聞を読みつづけていた。

貴「………春草さん」

春「……なに」

貴「いいんでしょうか……私……」

春草さんに聞くようなことじゃないのかも知れないが、とにかく今は誰かの同意が欲しかった。

春草さんは面倒くさそうに新聞を畳んだあと立ち上がる。

やっぱり答えてくれないか

春「いいんじゃない？俺も居候だし」