【明治東京恋伽】月夜と黒猫のワルツ (ページ19)

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子イヌのようだからページ19

貴「ん………」

ゆっくり目を開ける。
が、やはりそこは見知らぬ部屋。

昨日の事は全部夢ではなかった………ということだ。

貴「………早く起きよう」

私は制服に着替えて、ニーハイを履いてから一階へと降りていった。

サンルームへと降りていく階段の途中、朝食のいい匂いがしてなんだか懐かしいような気分になった。

自分のこと何一つとして覚えてないくせにね。

貴「おはようございます」

サンルームの扉を開けると鴎外さんは朝ごはん、春草さんは新聞を読んでいて、春草さんに関しては一瞬だけ私を見たあと興味無さそうにまた新聞に戻った。

鴎「やぁ、子イヌちゃん。昨日はぐっすり寝られたのかい？」

貴「はい！ありがとうございます………って子イヌちゃんですか！？」

なんなんだろうその呼び方は…………。
私が驚きのあまり固まっていると、鴎外さんは笑顔でこう言った。

鴎「あぁ。君が子イヌに似てるからそう呼ばせてもらったんだ。藤田警部補に睨まれていたときにまるで子イヌみたいに震えていたからね」

いや、あの藤田さんをみたら誰でもそうなるんじゃ………

鴎「だが、君が友達を逃がそうとしたところはとても感動したよ。我が身を捨ててまで主人を守る………うむ。やっぱり子イヌだ」

満足げに笑う鴎外さん。
まぁ………いいか。

鴎外さんは用事があるといって席をたった。

春「君……その格好どうにかならないの？」

そして飛んできたのは、鴎外さんとは対称的に冷たく咎めるような口調の春草さんの言葉。

貴「あ、そ、そうですよね……」

この時代では脚を出すのはみっとない事とされている。そりゃあ一緒にいて不機嫌なわけだった。

春「フミさんに言って着物出してもらえば。」

ほら。なんだかんだ言っても最後にはちゃんと教えてくれるのだ。………ちょっと意地悪だけど。

春草さんに助言をもらった私はフミさんの所に着物を貸してほしいと言って何着かある着物から紺と白と赤の袴を貸してもらった。

貴「……まるで書道部……」

私は硯で墨を擦っているだけで眠くなるような書道には全くもって不向きな人間なんだけど………格好そのものは完全に書道部だ。

その着物の着方をフミさんから教えてもらってサンルームに出た。

フミさんに着物の着方がわからないっていったら
めちゃくちゃ同情されたけど。でもまぁ……可愛い女の人に着物の着方を教えてもらえる機会なんて滅多にないからいいとしよう。