【明治東京恋伽】月夜と黒猫のワルツ (ページ17)

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案内役は……？ページ17

鴎「倉庫の中か。いやぁ、実に面白いことをいうねお嬢さん。でも、遠慮はしなくていい。客人を倉庫に泊まらせたとなったら我が家の信用にも関わる」

そこまで言われるとなんだか断る方が申し訳なくなる。

ちゃんと現代に帰れる日が来たら、その前に挨拶だけでもしよう。

鴎「では案内して差し上げたまえ。くれぐれも言っておくが、廊下が暗いからといって不埒な真似を働かないように。」

春「不埒な、真似ですか。」

鴎「いかにも」

鴎外さんがそう念を押すと春草さんはくるりと私に向き直った。

春「だってさ。廊下が暗いからって俺に不埒な真似を働かないように」

貴「えっ！？わ、私ですか！？し、しません！」

女の子相手ならわからん………こともなくもないが………さすがに男性相手に手は出せないし、そもそも出そうとも思わない。

鴎「違う！なんでそこでお前が被害者に回る。彼女に、だ。」

春「…あぁ。ま、なにかあったら大声で叫ぶといいよ。鴎外さんが駆けつけてくれるだろうし」

めんどくさそうにそう呟くと私に腕を掴むように指示してから進み始めた。

………後ろで鴎外さんがニヤニヤしてたのは見なかったことにしておこう。

＿＿＿＿＿＿

貴「ろ……廊下………暗すぎっ……！」

暗いとさっき聞いてはいたがまさかここまで暗いとは思ってもいなかった。

灯りを頼りに………といっても灯りは春草さんの手に持った小さなランプ一つのみ。

物の怪の話を聞いたばかりだし………正直泣きそうな暗い怖かった。

春「………あのさ。そんなに強く掴まれると痛いんだけど」

耐えきれなくなったとばかりに春草さんが口を開く。

どうやら恐怖のあまり春草さんの腕を強く掴みすぎてたらしい。

貴「ご、ごめんなさいっ！」

春「……まぁ、いいけど」

慌てて力を緩めるが、足元にあたる冷たい風に足が縮こまってしまう。

彼の態度はそっけないけど決して私を一人で置いていこうとはしなかった。

春「君、ひょっとして暗闇が怖いとか？」

貴「は、はい。実は……」

春「はっ。子供じゃあるまいし。」

鼻で笑われた。

恥ずかしくなってしばらく顔をうつ向かせていたが、また段々と恐怖が………。

貴「あ、あの！なにか話してもらえませんか？」

春「嫌だよ。君が勝手に話してればいいだろ？」

やっぱり素っ気ない。

でも、私もここで引くと思われたら大間違いだ。
……春草さんからしたら迷惑だろうけど。