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吐く息が白い季節。外は日が落ちてすっかり暗くなってしまった
「ったく、あいつ…」
俺に掃除を押しつけて帰った奴の顔が脳裏に浮かぶ
なにがデートだ。俺はお前が彼女とどうなろうが知ったこっちゃない
「…さむ」
身を刺すような寒さに耐えかねて、自販機の前に立った
なにか身体が温まるものを買おう。お代は明日掃除サボり野郎に請求してやる
「ねぇ」
「…」
「ねぇってば」
「…え、俺？」
「君しかいないじゃん」
声のした方を向くと同じ制服の女が立っていた
名札が赤い…ということは同じ学年であるはずだけど、その顔に見覚えはなかった
「…なんか用ですか？」
「どれがいいと思う？」
「え？」
「ん」
「…飲み物の話？」
「それ以外ある？」
「いや…」
初対面なのに無遠慮なやつだ
女は困惑する俺に構うことなく、俺の隣に来て自販機の中を物色し始めた
「自分が好きなの選べばいいでしょ」
「選べないから聞いてるんじゃん」
「そんな言われても…」
「じゃあ質問を変えよう。君は今からなに飲むの？」
「俺は…ホットいちごみるく」
「意外と甘党だね」
「なんで笑うんだよ」
別にいいだろ男がいちごみるく飲んだって
「ごめんごめん。いやぁ、いちごみるくにホットなんてあるんだね。初めて知った」
「言っとくけど、かなりおいしいからな」
「へぇ。じゃあ私も同じのにしよっかな。いい？」
「だから、好きにすればいいじゃん」
「そうだったそうだった」
女はケラケラと笑いながら自販機のボタンを押した。いちいち鼻につく奴だ。
「あ、ほんとだ美味しい」
「でしょ？」
「うん。君、名前は？」
「…作間龍斗」
「作間くんか。君のおかげで100円無駄にせずにすんだ。ありがとう」
「いや、別に、」
「じゃ、また」
女は手を振って颯爽と帰ってった
「名乗られたら名乗るだろ普通…」
名前もわかんないのにまたなんてあるもんか
「…変なやつ」
ぼやきながら缶を開けた。いちごみるくは少し冷えていた
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作者名：希翠 | 作成日時：2019年12月25日 19時
