手枷、足枷、君にお任せ【usss】 (ページ15)

今日:11 hit、昨日:15 hit、合計:16,117 hit

. ページ15

「新しい服欲しいって言ってたし、他にも色々買いにいこ」
「坂田さんとお出かけ、嬉しい」
「ほんま？俺も二人で遊びに行きたかったんやで」

隣にいるAは今にもスキップしてしまうのではないかというほど、楽しそうに歩いている。
こんなにも喜んでいる様を見れるのなら、もっと早くに外へ連れ出してあげればよかった。俺が少し後悔するくらいAはいきいきとしていた。

「A、まだなにか欲しいもんある？」
「欲しいものじゃないけど…あれが食べたい」

一通りの買い物が終わった帰り際、Aに質問をすると指を差したのはクレープのお店。ピンクを基調にしたポップな店先ではお姉さんがクレープを手渡しているのが見えた。

そういえばAは甘いものへの飛び付きがよかったことを思い出す。

「ええやんクレープ！買おか！」
「うん！苺乗ってるやつがいいなあ」
「会計するからどっか座っとって」
「じゃあ、あそこのベンチで待ってるね」

目線の先にいくつかある椅子へ向かうAの背中を見送って、俺はお姉さんに小銭を渡す。

「(初めて、聞いた)」
今まで自分の願いはおろか、俺たちの機嫌を損ねないように顔色ばかり伺っていたようなAが、初めて自分の欲しいものを話してくれたのだ。俺はひとり喜びを噛みしめた。