第九話 慚愧 ページ36
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轟々と燃え盛る兵舎は、暗い夜の小樽の街を明るく照らすには十分すぎる程だった
「…北里、おまえの姉は確か医者だったな」
鶴見中尉が微笑む
「明日、うちに来なさい」
私はなんてことをしてしまったんだろう…
昨夜の一連の自分の行動を省み、
脇目も振らずに杉元の手当をしてしまったことを酷く反省した
目の前の患者を助けたいがあまり、自分の身を守るための冷静な判断を取れなかったのだ
弟の寧一郎には
医療知識がないのに
「今すぐここで服を脱ぎなさい」
チャキ、と後方から音がして
銃口を向けられていることに気がついた
きっと月島だろう
『え…あの…』
和室の真ん中に腰かけ、やけに穏やかな様子の鶴見中尉と目が合う
冷や汗が止まらない
「どうした？早くしなさい」
『……』
だめだ…
無理だよ、脱げない
どうしよう、やっぱり鶴見中尉は気づいてるのかな
私が弟と入れ替わっていることに
「それとも…脱げない理由でもあるのかな？」
もはや言い逃れする術はない
『わ、わかりました…』
ガチガチと奥歯が震え、音が鳴る
私だって何の覚悟もなしにここへ来たわけじゃない
例え女だとバレても、殺される前に説明して何とか置いてもらおう
そう思って今日はここに来たんだ
肋骨服の留め具に手をかけ
1つ外し、ゆっくりとまた1つ外す
鶴見中尉は何も言わず、じっと私の目だけを見てる
全部脱いでしまったあとで、私は殺されるのだろうか
もうあと2つしかボタンはないのに…
震える指は上手く留め具を外せない
「ああ〜！ダメだ！！ダメダメ！耐えられん！」
声を上げたのは鶴見中尉だ
突然の大声に、ビクリと肩が上がる
「やはり私には女性を辱めることはできない…」
『！？』
女性！？
たしかに今、鶴見中尉は女性と言った
やっぱりバレてたんだ…
覚悟してはいたものの、焦りからか膝が震え出した
暑くもないのに額からどんどん汗が流れてくる
「北里くん、悪いがしばらく君を監視させてもらった…様子がおかしかったからね、ずーっと疑ってたよ」
腰を上げ、ゆっくりと中尉はこちらへ歩いてくる
「だけどね、杉元を手当てする君を見て確信したよ」
中尉がポンと私の肩に手を置く
「君は北里A…寧一郎の双子の姉だろう…
なぜこんな所にいるんだ？」
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芝(プロフ) - 鮭マヨさん» コメントありがとうございます。とても励みになります…(;_;)これからもどうぞよろしくお願いいたします。 (2021年9月13日 1時) (
レス) id: ac408ee6ee (このIDを非表示/違反報告)
鮭マヨ - この作品ほど更新が終わってほしく無いと思ったの初めてです…更新めっちゃ楽しみにしてます…！ (2021年9月11日 8時) (レス) id: 9536630108 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：芝 | 作成日時：2021年8月31日 2時
