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ハリーはマートルと話す機会があるなら、それを逃すつもりはないようだった。
そうして、嬉しいことに、その機会があちらからやってくる。
午前の授業が半分ほど終わったところで、ギルデロイ・ロックハートが次の''魔法史''の教室まで生徒を引率して行くことになった時のこと。
ロックハートは、生徒を安全に送り届けるためにわざわざ廊下を引率して行くことは、まったくの無駄だと思っているようなのだ。
こういう機会を難なく逃すような人ではない私たちは互いに目配せをして、ニヤリと笑った。
ロックハートの髪の毛は、いつものような輝きがないあたり、五階の見廻りで一晩中起きていた様子である。
ロ「先生、引率はここまでにしてはいかがですか。 あと一つだけ廊下を渡ればいいんですから」
「実は、ウィーズリー君、私もそうしようかと思っていたところで」と、ロックハートが言った。
ギ「戻って、次の授業の準備をしないといけないんでね」
私にウインクを飛ばして、ロックハートは足早やに髪をなびかせてその場を去った。
『授業の準備だってよ、どうせ髪の毛をカールしに行くんだろうよ』
呆れたが、決して笑う気にはなれず、聞こえよがしに大きなため息をついた。
グリフィンドール生を先に行かせ、私達は脇の通路を駆け下り、''嘆きのマートル''のトイレへと急ぐ。
計略がうまく行ったことを、互いに称え合っていたそのとき─────
「ポッター、ブラック、ウィーズリー! 何をしているのですか?」
マクゴナガル先生が、これ以上固くは結べないだろうと思えるほど固く唇を真一文字に結んで立っていた。
「僕たち、僕たち─────ちょっと、様子を見に……」と口をもごもごさせたロンは焦りに焦って、ポロッとボロを出しそうになっている。
「ハーマイオニーの」と言ったのは平然としているハリーであった。
ロンも私もマクゴナガル先生も、そういったハリーの方を見つめた。
「先生、もうずいぶん長いことハーマイオニーに会っていません」と、ハリーはロンの足を踏んづけながら急いで付け加える。
ハ「だから、僕たち、こっそり医務室に忍び込んで、それで、ハーマイオニーにマンドレイクがもうすぐ採れるから、だから、あの、心配しないようにって、そう言おうと思ったんです」
マクゴナガル先生は、ハリーから目を離さない。
一瞬、先生の雷が落ちるかと思われたが、先生の声は奇妙に掠れていた。
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作者名:白眉 | 作成日時:2022年5月5日 11時