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「蜘蛛の跡をつけろだって」と、ロンは袖で口を拭きながら弱々しく言う。
ロ「ハグリッドを許さないぞ。 いったいなんの意味があった？ 何がわかった？ 教えてもらいたいよ」
『ハグリッドは無実だったんだ、五十年前も今も''部屋''はハグリッドが開けたんじゃないってこと』
そう答えてやるとロンは押し黙り、ハリーは私たちに透明マントを頭から被せた。
アラゴグを物置の中で孵すなんて、どこが「無実」なもんか、と言いたげである。
しかし、ふと頭を掠めるのは、五十年前、誰もがハグリッドを疑い、退学にまで追い込まれた時のハグリッドの気持ちであった。
それが度々頭を掠め、私たちはふと感じる寂しさがあり、その寂しさが一筋の飛行機雲のようにすーっと通り抜ける。
玄関ホールをこっそりと横切り、大理石の階段を上がり、見張り番が目を光らせている廊下を、息を殺して通り過ぎる。
しかしハリーが足を向かわせるところはグリフィンドールの談話室ではない。
もっと詳しく言うのであれば、私の自室の方であった。
『ねえ』と息を殺して私は尋ねた。
『君、道を間違えてない？』
ハ「間違ってないよ、ただこっちの道の方が安全でしょ？」
いや、まあ、と私は口にしたかったが『ふーん』と鼻で返事をし、肩を竦めた。
ようやく安全な談話室───ではなく、私の自室にたどり着いた。
暖炉の火は燃え尽き、灰になった残り火が、わずかに赤みを帯びている。
私たちはマントを脱いで、私はベッドに倒れ込み、有無を言わずロンはソファーに横になった。
そんな私とロンと違って、ハリーはアラゴグが言ったことを一生懸命考えているように見える。
ハ「ねえ、これじゃあ八方塞がりじゃない？ もう訪ねるべき人はいない」
ロ「でも一応、一歩は進んださ。犯人は誰なのか振り出しに戻るっていう一歩を」
ロンの皮肉を意に介さず、ハリーは顔を顰めて熟考していた。
『いいや、手がかりはある』と私はベッドに横たわったまま人差し指を立てた。
『ホグワーツで五十年前に亡くなった女生徒に聞けばいい』
八方塞がりの道に微かな光を当ててやると、ハリーはぱっと閃いたようにして私を見ながら、ロンの肩を揺する。
ハ「そうだよ、死んだ女の子だけど、アラゴグは、トイレで見つかったって言ってた」
ロ「それがどうしたんだ？」
「もし、もしだよ」とハリーは低い声で言った。
ハ「その子がトイレにずっといるとしたら？」
ロ「まさか───嘆きのマートル？」
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作者名：白眉 | 作成日時：2022年5月5日 11時
