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それ以上の追及はできないものだと感じたハリーは、初めて、巨大クモが、四方八方から詰め寄って来ていることに気がついたようであった。
「それじゃ、僕たちは帰ります」と、木の葉をガサゴソいわせる音を背後に聞きながら、ハリーはアラゴグに絶望的な声で呼び掛ける。
「帰る?」とゆっくりとした声が辺りに響いた。
アラ「それはなるまい───── 新鮮な肉を、おあずけにはできまい。 さらば、ハグリッドの友人よ」
それを合図に、上から蜘蛛が降ってくるのを見兼ねた私は姿を現して、ハリーの袖をぎゅっと引っ張った。
ハ「A! 君、いったいどこに─────」
『それはあと!』と高らかで意気揚々とした声を響かせて、辺りに杖を構える。
多勢に無勢。
しかし私の記憶によれば、まもなく助けが来るはずであった。
───── まさに、私の記憶は正しく、高らかな長い音とともに、窪地に眩しい光が射し込む。
ウィーズリーおじさんの車が、荒々しく斜面を走り降りて来たのだ。
ヘッドライトを輝かせ、クラクションを高々と鳴らし、クモをなぎ倒し、何匹かは仰向けに引っくり返され、何本もの長い脚を空にばたつかせている。
車は、私達の前でキキーッと音を立てて停まり、ドアがパッと開いた。
ハリーが前の座席に飛び乗り、私はファングを後部席に押しやって飛び乗り、ロンは運転席に乗り込んだ。
そうするとバタンとドアは閉まり、ロンがアクセルに触りもしないのに、車はロンの助けも借りず、エンジンを唸らせ、また蜘蛛を倒しながら発進し始める。
車は坂を猛スピードで駆け上がり、窪地を抜け出し、間もなく茂みの中へと突っ込む。
車は勝手に走った。
太い木の枝が窓を叩きはしたが、車はどうやら自分の知っている道らしく、巧みに空間の広く開いているところを通り抜けていく。
〇
『助かったな、みんな生きてて』
禁じられた森の出口まで来て、車から降りてから私はそんなことを呟いた。
ロ「全くだよ」
そういったロンは間抜けた顔のまま、車がまた森の中へとバックして、やがて姿が見えなくなるまで見ていた。
そうしてハグリッドの小屋に透明マントを取りにハリーが上がったのを見兼ねて、かぼちゃ畑に走ったロンの後ろ姿を見る。
ゲーゲーとはしたない音を立ててロンが吐き、私はハグリッドの小屋の前で、腕を組む。
そうしてハグリッドの小屋から出てきたハリーが私とロンの方を何度も目を往来させていた。
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作者名:白眉 | 作成日時:2022年5月5日 11時