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そうしてフォークスが私とハリーの近くに落とした日記を、ハリーはあたかもそうするつもりであったかのように毒牙を振り上げた。
日記帳の真芯にズブリと突き立てる。
恐ろしい、耳をつんざくような悲鳴が長々と響き、日記帳からインクが激流のようにほとばしり、ハリーの手の上を流れ、床を浸す。
リドルは身体を振り、悶え、悲鳴をあげながらのたうち廻り、リドルは消え去った。
あたりに静寂が訪れ、私はあまりのあっけなさに呆然として傍に落ちた杖を手に取る。
インクが日記帳から浸み出し、ポタッポタッと落ち続ける音だけが静けさを破っていた。
『ハリー』と私は現実と思考の狭間で彷徨っていた自分を引き戻し、落ち着き払った声を出す。
ハリーは徐ろに立ち上がり、私は彼の腕を肩に回して、ヨロヨロとジニーのところに向かった。
私の足も限界に来ていた。
膝はガクガクと動き、微かな呻き声をあげ、体を起き上がらせたジニーの元へ倒れ込むようにしてそばに寄る。
ぼんやりとした目で、ジニーはバジリスクの巨大な死骸を見てから、私達を見て、血に染まった私達の制服に目をやった。
そうして、ハリーの手にある日記を見た。
途端にジニーは身震いして大きく息を呑み、それから涙がどっと溢れさせる。
ジ「私……朝食の時に、あなた達にい、言うつもりだったの。でも、パ、パーシーの前では言えなかった。嘘じゃないの──日記のリドルが私にそうさせたの、それで」
『ジニー』と私は柔和な声を出して、彼女の肩に手を置いた。
『大丈夫、全部分かってる。 終わったんだよ、リドルもバジリスクも──さあ、帰ろう。 おいでジニー、三人で帰ろう』
うん、と頷いたジニーから涙がポタリと落ちる。
「わたし、退学になるわ」と、泣きながら言うジニーを、ハリーはぎこちなく支えて立ち上がらせた。
そうして私はジニーの背に手を回して、柔らかく彼女を抱きしめながら歩く。
『大丈夫、大丈夫。 君は退学にならない、きっとダンブルドアは分かってくれる』
ジ「でも……」
『信じて』と私は軽快な声を出して、にこやかな笑みでジニーの泣き腫らした顔を覗き込んだ。
『この予見者が予見するに君は退学にならないんだ』
そういうとしゃくりあげて泣いていたジニーもいくらかは安心したように、泣き声を小さくして、彼女も私を抱きしめながら前を歩いた。
死んで動かなくなった毒蛇のとぐろを乗り越え、薄暗がりに足音を響かせ、入り口を通ってトンネルへと戻る。
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作者名:白眉 | 作成日時:2022年5月5日 11時