四畳半トリップ~《秘密の部屋》結~【ハリー･ポッター】 (ページ25)

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手を繋いでいたハリーは何かにつまずき、バランスを崩したと同時に私も床に転んだ。

石の床でしたたかに顔を打ち、口の中は血の味で広がり、鼻からは暖かい鼻血が出てきている感じがした。

しかし、そんなことは今はどうでもいい。

毒蛇はすぐそこまで来ている。

つまずいても固く握りしめた手は離されることなく、またよりいっそう強い力で掴み返した。

私とハリーの真上で、破裂するようなシャーッシャーッという大きな音が聞こえる。

すると卒然、耳に狂ったようなシューシューという音と、何かがのた打ち廻って、柱を叩き付けている音が聴こえてきた。

私たちはもう我慢ができず、薄く開いた目で何が起きたのかを見ようとした。

目の前で───不死鳥が、バジリスクの目を潰していた。

私達が呆気に取られてそれを見ていると、バジリスクの胴体が床を滑って私の手を掠める。

ヒヤリと背中にナメクジが這うような嫌な感覚が走った。

大きな黄色い球のような目は、両眼とも不死鳥に潰され、おびただしい血が床に流れ、バジリスクは苦痛にのたうち廻っている。

その間にも、リドルはバジリスクに怒鳴っていた。

ト「臭いで探せ！早く殺せ！」

ハリーの手がかすかに力が込められている。

私にはすべきことがわかっていた。

もう覚悟は決まっている。

『ハリー、組み分け帽子のところまで走れ』

ハ「組み分け帽子？」

『それがもう最後の頼みの綱なんだ』と言った私は、チラチラとバジリスクの様子を見ていた。

ハリーが「きみは？」と問う。

『時間を稼ぐ』

そういうとハリーはパッと手を離して、力強い瞳で私を見返した。

彼の瞳の奥は煌びやかな希望に満ち、チカチカとしていて、その淡い緑の世界で切り傷だらけの私が写っている。

そんな淡い緑の世界にいる私の瞳も希望に満ちていた。

私がバジリスクの真正面に走り出すと、ハリーはその側面を合間を縫って駆け出した。

信頼というものはそういうものだろう。

『ハリー、君はそのまま自分の道をひた走れ！』

ハリーは私の方を振り返ることなく、片手をあげた。

私は俄然やる気が出た。

やっぱりこうでないと面白くない。

挑戦的な笑みでのたうち回るバジリスクを見つめ返す。

ハリーに気を取られているバジリスクの鼻先に私は自分のローブを投げかけて、私の匂いを覚えさせた。

そうしてローブを振り払い、私に一直線でやってきたバジリスクから這う這うの体で身をかわす。