１７３ ページ23
リドルの貪るような目に、奇妙な赤い光がチラチラと漂っていた。
「ヴォルデモートは」と言ったリドルの声は静かであった。
リ「僕の過去であり、現在であり、未来なのだ───」
ポケットから杖を取り出し、リドルは空中に文字を書く。
三つの単語が揺らめきながら淡く光った。
もう一度、杖を一振り、名前の文字が並び方を変える。
「分かったね」と囁くリドルの口元には残酷げな笑みが浮かび始め、その目は野心に燃えている。
リ「僕が穢らわしい父の名をいつまでも使うと思うかい？ 母方の血筋にサラザール･スリザリンの血が流れている僕が────世界一偉大な魔法使いが！」
『違う』
私は瞬時にリドルの言葉をその言葉で塞いだ。万感の憎しみと冷淡さがこもった声だった。
ハ「世界一偉大な魔法使いはダンブルドアだ。君がどこに隠れていようと、君は未だにダンブルドアを恐れている」
途端にリドルの顔から微笑は消え、醜悪になる。
ト「ダンブルドアは僕の記憶にすぎないものによって追放された！」
ハ「君が思っているより、ダンブルドアは遠くに行っていない！」
ハリーのその声は確信と言うよりも、願いというものが強く込められていた。
目の端で私とハリーは互いに目配せをした。
その行為が、その瞳が、互いに信用している証とでも言えるものである。
反対にリドルは口を開いたが、その顔が凍りついていた。
どこからともなく、音楽が聴こえる。
それは妖しく、奇妙で、神秘的。
この世のものとも思えない旋律で、私の毛は逆立ち、心臓が二倍の大きさに膨れ上がったかのような気さえする。
やがて、その旋律が高まり、胸の中で肋骨を震わせるように感じたとき、すぐ傍の柱の頂上から炎が燃え上がった。
深紅の鳥が、孔雀の羽のように長い金色の尾羽を輝かせ、まばゆい金色の爪にボロボロの包みを掴んでいる。
『フォークス……』と私が小さく呟くと、フォークスは私とハリーの足元に組み分け帽子を落とし、歌うのをやめた。
そうして綺麗な瞳でリドルを見据えた。
ト「それは老いぼれの''組み分け帽子''じゃないか」
リドルの高笑いが暗い部屋に反響し、まるで十人のリドルが一斉に笑っているかのよう。
しかし私からしてみれば、その組み分け帽子は勝利への通行手形であった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 173人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「トリップ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：白眉 | 作成日時：2022年5月5日 11時
