四畳半トリップ~《秘密の部屋》結~【ハリー･ポッター】 (ページ21)

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ト「どうも、ヘカテ──いや、A･ブラック」

「目を覚まさないって、どういうこと？」と言ったハリーは、絶望的になっている。

ハ「その、まさか……」

ト「いいや、生きている。しかし辛うじて、だ」

ハリーはリドルをじっと見つめ、彼もハリーをじろりと冷たい目で見つめ返していた。

ハ「君は、どういうことなの？君はなんなの？」

「それを聞くなら、そこの友人に聞くといい」とリドルは、にやりとした顔で私に視線を向けた。

ト「彼女は全てわかっているようだから」

彼は、冷刻で驕慢(きょうまん)な光をその瞳から射出している。

『記憶──日記の中に、五十年間残されていた記憶』

「そうだとも。素晴らしいね、君は」と言ったリドルの瞳が怪しげに揺れ動く。

そんなリドルに神経をとがらせていた私の後ろで、ハリーはがそごそと杖を探しているような素振りをし、私は後ろを少しだけ振り向いた。

ハ「A、僕の杖を知らない────」

そういったハリーが声をつまらせて、リドルの方を見るものだから、私もゆっくりとリドルの方に目をやる。

リドルはまだ私とハリーを見つめていた。

すらりとした指でハリーの杖────と私の杖をくるくる回していた。

私は握りしめていたはずの右手を見て、その手に杖がないことを初めて知る。

確証も希望もないけど、私は身体中をガサゴソと触り、一切の杖の感覚がなかったことにサッと血の気が引いた。

リドルの手の中に私とハリーの杖がある。

呪文での対抗は皆無。

ゾッと背筋に寒気がした。

リドルが私の杖をさすっている。

『返せよ』

私の強い口調に違和感を持ったのか、後ろで「どうしたの？ A」とハリーが小さく洩らした。

『返す気なんてないんだ、奴は』

リドルの口元にまた女性のように儚げで美しい嫣然とした笑みをうかべる。

ハ「……それって、どういうこと？」

疑いの目を宿して、リドルを見つめた。

そうして、ハリーは思い出したように切り出す。

ハ「ジニーは、どうしてこんなふうになったの？」

「それは面白い質問だ」とリドルは愛想よく言った。

ト「本当の原因は、目に見えない人物に心を開き、自分の秘密を打ち明けたことによってだ」

貪るような視線でリドルは私とハリーを見続ける。

「十一歳の小娘のたわいもない悩み事を聞いてあげるのは、まったくうんざりだったよ」と、リドルの話は続けた。