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「アラゴグ! アラゴグ!」
蜘蛛がそう叫んでいる。
霧が立ち込めたような蜘蛛の巣のドームの真ん中から、小型の象ほどもある蜘蛛がゆらりと現われた。
胴体と脚を覆う黒い毛に白いものが混じっていて、鋏が位置する醜い頭に、八つの白濁した目がある。
見る限りその大きな蜘蛛は盲目であった。
「なんの用だ?」と、鋏を激しく鳴らしながら、盲目の蜘蛛が言った。
「ハグリッド以外の人間です!」
ハリーを捉えた蜘蛛がそう答えた。
「殺せ」と言ったアラゴグは、イライラして鋏を鳴らし、怒りを示している。
アラゴク「眠っていたのに─────」
ハ「ぼ、僕達、ハグリッドの友達です!」
カシャッカシャッカシャッと、窪地の中の蜘蛛の鋏がいっせいに鳴り、無意識にも『うげっ』と声を洩らした。
しかしその私の声は蜘蛛の音に掻き消され、ロンにしか聞こえてはいないよう。
アラ「ハグリッドはこの窪地に一度も人を寄越したことはない」
ハ「ハグリッドが秘密の部屋を開けたと疑われて、アズカバンに連れていかれました!」
アラゴグは怒り狂って鋏を鳴らす。
蜘蛛の群れがそれに従ったので、窪地中に音がこだましました。
ちょうど拍手喝采のようでしたが、普通の拍手なら、私も恐怖で吐き気を催すようなことはなかっただろう。
アラ「みんなが私を秘密の部屋に住む怪物だと信じ、ハグリッドを退学にさせた」
「それじゃ、あなたは……あなたが秘密の部屋から出て来たのではないのですか?」とハリーが言った。
アラ「私は! 私はこの城で生まれたのではない。もっと遠くの方から来た。ハグリッドは私を育ててくれた、良い奴だ」
ハ「それじゃあ、あ、あなたは一度も誰も襲ったことはないのですか?」
「一度もない」と、年老いた蜘蛛はしわがれ声を出した。
アラ「死んだ女の子の死体はトイレで発見された。私たちの仲間は、暗くて静かなところを好む」
ハ「それなら、一体何が女の子を殺したのか、知りませんか?」
カシャカシャという大きな音と、何本もの長い脚が怒りで擦れ合う、ザワザワという音が湧き起こり、言葉が途中で掻き消された。
アラ「城に住む怪物は、私たち蜘蛛の仲間が何よりも恐れる太古の生物だ」
「いったいその怪物は?」と、ハリーは急き込んで尋ねた。
アラ「私たちはその生物の話をしない! 私たちは、その名前さえ口にしない!」
威圧的な声が私たちに重くのしかかる。
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作者名:白眉 | 作成日時:2022年5月5日 11時