四畳半トリップ~《秘密の部屋》結~【ハリー･ポッター】 (ページ19)

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『爆発させることはできるけど、今やったら、私たちぐしゃぐしゃになっちゃうよ』

「ひぇ」と間抜けた声が岩の向こう側から聞こえた。

ハ「君はそこで待ってて。先生と一緒にいて、僕らは先に進む。もし僕らが、一時間経っても戻らなかったら」

ハリーはそこで言葉を止めて、静かなる沈黙が訪れる。

「ぼくは少しでもここの岩石を取り崩してみるよ」と言ったロンは、懸命に落ち着いた声を出そうとしているよう。

ロ「そうすれば、君たちが────帰りにここを通ることができる。だから、二人とも────」

『死なないよ』

私はロンの震えた声に応えた。

『死なない、絶対に』

もう一度応えた。

ここは、時間が流れていないかのように静かだった。

どんどん吸い込まれて、抜け出せなくなるような深さがある。

それでいて、その空気を、静けさを、空間を、私の声が切った。

「それは予言かい？」とハリーはさっき前で震えていた声ではなく、力強いものを持っていた。

『予言でも予知でもない。根拠がないものだけど────私は信じてるんだよ』

私はこの恐ろしげな空間の中で間抜けた、明るい声を響かせる。

『死なないことを信じてるし、何より君達を信じてる』

「信じてる、か」と岩の向こう側でロンが復唱した。

ロ「なんかAらしいよな、こんな状況でさ、いきなり間抜けたことを言うんだぜ」

ハ「信じる───いい言葉だね。何だか心が暖かくなる」

子供らしい笑いがハリーとロンから洩らされて、こんな命懸けの状況で私たちは陽気に笑った。

恐ろしげに揺れる私たちの影も反響するこの空間も不釣り合い極まりない。

私とハリーはロンに別れを告げて、自信を持って歩き出す。

杖を手袋越しにぎゅっと握りしめ、トンネルをくねくねと何度も曲がる。

もう一つの曲り角をそっと曲がった途端、遂に前方に固い壁が見えた。

その壁には二匹のヘビが絡み合った彫刻が施されていて、そのヘビの目には輝く大粒のエメラルドが嵌め込まれている。

重々しい雰囲気と恐ろしげな空間をそこは醸し出していた。

「開け」と、低くかすかなシューシューという音でハリーは呟いた。

壁が二つに裂け、絡み合っていたヘビが別れ、両側の壁が、滑るように見えなくなる。

ひんやりとした空気が漂い、カビの匂いが鼻につき、私は咳払いした。

そうして奥深く広がる目の前の闇を見た。

それはまるで私の人生を映し出している鏡、そのものに感じられた。