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「あそこに何かある……」と、かすれた声で言ったロンが、私の肩を掴んだ。
『近づけば分かるよ』
私のいつものような軽やかな声は深いじめじめとした中で不協和音を成している。
トンネルを塞ぐように、何か大きくて曲線を描いたものがあり、輪郭だけがかろうじて見ることができる。
ロ「バカ言うなよ……もしあれが、その、バジリスクだったら……」
そう声を詰まらせるロンの後ろで、ロックハートはしっかりと両手で両目を覆っていた。
恐る恐ると近づいたハリーの杖が照らしだしたのは、巨大な蛇の抜け殻。
毒々しい鮮やかな緑色の皮が、トンネルの床にとぐろを巻いて横たわっていた。
「これは」と、ロンが力なく言った。
体感的に見ると、映画の何倍も大きく見えるそれに、私は生唾をゴクリと飲んだ。
力なくいるロンの後ろではロックハートが腰を抜かしているようだった。
ロ「ほら、立て!」
ロンが折れた杖を突き立てたまま、きつい口調で言っている。
するとロックハートは隙を見て、彼を殴り倒し、あろうことかその杖を奪った。
何が起こるかわかった私は、彼から咄嗟に離れた。
ギ「君たち! 冒険はこれでおしまいだ。 記憶に別れを告げるがいい!
ロックハートは、スペロテープで張り付けられたロンの杖を頭上にかざし、一声叫んだ。
杖は小型爆弾なみに爆発した。
私は、蛇のとぐろを巻いた抜け殻につまずき、滑りながら、両手でさっと頭を覆って逃げる。
トンネルの天井から、大きな塊が、雷のような轟音をあげて崩れ落ちてきたのだ。
次の瞬間、岩の塊が固い壁のようになって立ち塞がり、ハリーは私を起こして、岩を見つめた。
『ロン!』と私は立ち上がりながら、岩の向こう側に投げかけた。
『大丈夫? ロン』
ロ「ぼくは大丈夫だ。 でも、こっちのバカはダメだ。杖で吹っ飛ばされた」
ロンの声は、崩れ落ちた岩石の向こう側からくぐもって聞こえて来た。
鈍い音に続いて「痛っ!」と言う大きな声が聞こえた。
ロンがロックハートの向こう
「さあ、どうする?」と言ったロンの声はくぐもっていたけれど、必死さを宿している。
ロ「A、何とかできない? 君の知る限りの呪文で、その魔力で!」
『やりたいとこなんだけどなあ』
私はカールがかった髪の毛をクシャクシャとして、情けなく言った。
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作者名:白眉 | 作成日時:2022年5月5日 11時