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ロックハート先生の部屋の中は活気に満ちているかのよう。
引っ掻くような音や、ドシンドシンという音に加えて慌ただしい足音が聴こえている。
急かすように扉を叩くと、ドアが少しだけ開いた。
ロックハートが顔を半分だけ覗かせて、私達を見ている。
ギ「ああ、なんだい？君たちか────」
辿々しい話し方。
私はやきもきして、その扉を押し開けて、ずけずけと遠慮もなしに部屋に上がった。
そんな私に続いたハリーもロンも部屋を見渡して、口をあんぐりと開けた。
無理もない。
部屋の中は、ほとんどすべて取り片付けられ、床には大きなトランクが二個置かれていた。
ハ「どこかへ行かれるのですか？」
「うー、あー、そう」と、ロックハートは扉の裏側から等身大の自分のポスターを剥ぎ取り、丸めながら喋る。
ギ「急に呼び出されて────仕方なく、行かなければ」
「ぼくの妹はどうなるんですか？」と、ロンが愕然とした調子で頭を撫で付けた。
「そう、そのことだが……まったく気の毒なことだ」と、ロックハートは私達の目を見ないようにして、引き出しを開け、中のものを引っくり返してバッグに入れながら言った。
ハ「先生は逃げ出すんですか？ こんな時に？ 本に書いてあるようなことをした、あなたが？」
ギ「本は誤解を招く」
『自分で書いたくせに』
私の棘のある言葉が刺さったのか、ロックハートは「うっ」と呟き、私を見定めた。
まるでその目は最後の希望と言いたげな目である。
ギ「A、Aよ」
ロックハートは今までやっていた作業をやめて、私の肩に手を置いた。
焦れったそうに言う彼の口調はやはり私の胸に引っかかるものがあった。
ギ「私はまだ諦めていませんよ、A。まだ遅くない、私と一緒に''組みません''か？」
その言葉を聞いて私はやっと理解した。
ギルデロイ・ロックハート。
彼は私に惚れていた訳ではなく、私の予知能力に惚れていたのだ。
この能力さえあれば、望む未来を手繰り寄せることが出来るものだと感じていたに違いない。
私は力強くロックハートを押し飛ばして、冷淡な目をロックハートに向ける。
『あなたは私に惚れていたんじゃない。私の予知能力に惚れてるんだ』
「いやっ、その、違うんだよA」と疑わしい声をロックハートは出した。
『お断りします、人の手柄を自分の手柄にして忘却の呪文をかけ、本にさも自分の手柄のように書き連ねる人はこちらから願い下げ』
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作者名：白眉 | 作成日時：2022年5月5日 11時
