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その日は余りに現実的過ぎてかえって悪い夢のようで、ロン、双子たちとグリフィンドールの談話室の片隅に腰掛け、互いに押し黙っていた。
そこにパーシーはいなかった。
ウィーズリーおじさん、おばさんにふくろう便を飛ばしに行ったあと、自分の寝室に閉じ籠もってしまった。
午後の時間が、こんなに長かったことは今までになく、これほど混み合っているグリフィンドールの談話室が、こんなに静かだったことも、一度もない。
日没近く、フレッドとジョージは、そこにじっとしていることがたまらなくなって、寝室に上がって行った。
「ジニーは何か知っていたんだよ」と、教員室の洋服掛けに隠れて以来、はじめてロンが口を開いた。
ロ「だから、連れて行かれたんだ。何か''秘密の部屋''に関することを見つけたんだ、きっとそのせいで」
ロンは激しく目を擦り、顔を上げる。
小さく見開いた両眼は、涙を湛えて堆くもり上り、憤りと熱と悲しみで入り乱れていた。
「A」と呼びかけたそのロンの声に私は窓辺に寄りかかっていた体を少しだけ動かした。
ロ「君って、予見者なんだろ……予知能力があるんだろ。なあ、どうして先を見てくれないんだ? どうして、どうして教えてくれないんだよ」
ロンの声が悲痛なものへと変わり、ゴクリと唾を呑んだハリーは私の顔を見上げた。
うっー、と本物の犬のような唸り声が喉の奥から出てきた。
そう言われると分かっていた。
ただこれは予知だの、予見だのではなく、単純に私は覚悟していた。
そりゃそうだ。
もし私が先のことを知っているとして、それをわかった上で伝えないでいたのは彼らの信頼を削ぐ。
「なあA、君はこうなることを知っていたのか」と言ったロンは徐ろに立ち上がって、強い力で私の肩を掴んで揺さぶった。
ロ「その目には何が見える! 」
「ちょっと、ロン!」と間に入ったハリーは心配げに私とロンの顔を交互に見た。
『見えていたし、知ってもいた。だけど伝えなかった』
私から洩らされた掠れた声が段々と小さくなっていく。
『最初から分かってた。 この学年が始まる前から、バジリスクのことも被害が出ることも、ハーマイオニーのことも、ジニーのことも』
ロ「それなのに、君は言わなかったの?」
『それは────』と言った私は喉から声が出なくなった。
そんな私に助け舟を出したのは、眼鏡の奥を輝かせているハリーだった。
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作者名:白眉 | 作成日時:2022年5月5日 11時