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ス「なんと、適任者がここに。女子学生が怪物に拉致された。 秘密の部屋そのものに連れ去られた。 いよいよあなたの出番が来ましたぞ」
誰からの目から見ても、白い歯を輝かせていたロックハートの顔には恐怖の色が伺えた。
「それでは、ギルデロイ、あなたにお任せしましょう」と、マクゴナガル先生がトドメの一言を授ける。
ロックハートは、絶望的な目でまわりを見つめていたが、誰も手助けをしようとする者はいない。
今のロックハートは、ハンサムからは程遠い状態になっていた。
唇はワナワナ震え、歯を輝かせていたいつもの笑顔が消えた顔は、うらなりの
ギ「よ、よろしい。わ、私の部屋に戻って、し……支度をします」
そう言うや否や、彼はスタコラサッサと教員室を出ていき、マクゴナガル先生は鼻頭を膨らませた。
マ「さてと寮監の先生方は寮に戻り、生徒に何が起こったのかを説明を。明日朝一に帰宅させると、他の先生方は、生徒が一人たりとも寮の外に残っていないよう見廻ってください」
マクゴナガル先生の言葉をしっかりと心得た先生達は一人、また一人と教員室を出ていった。
そうして教員室に残ったのは、洋服掛けを仕切り、私たち三人組と教授とクィリナスだけとなった。
教授は一向に出る気配がなく、窓辺に寄りかかるクィリナスをじっと睨んでいる。
すると徐ろに「なんです?」という声を教授にクィリナスが投げかけた。
ス「ブラックはどこにいる?」
クィ「私はあの人の監視役でも保護者でもないんですよ、全く」
「戯言はいい」と凄んだ教授にクィリナスは怯むことなく、鋭い眼光で教授を見つめ返した。
クィ「知りませんよ、あの人がどこにいようが勝手です。私はあの人のお気の向くままに、お好きなように、従うだけです」
ス「まるで下僕だな、クィレル」
そういった教授は薄く伸びた笑いを口元に宿し、クィリナスは呆れたように息を吐く。
クィ「早く寮に戻ってはどうです? 私はあの人を探すとします。残念ながら、あなたはあの人を探せないんでしょう」
ス「黙れ」
目を細めた教授は教員室のドアノブを力強く握りしめている。
クィ「あなたはあの人のことを何にも知らないんです」
それに何も答えずに出ていった教授の後ろ姿をクィリナスはため息をついて見つめていた。
「これだから、意気地無しは……」という言葉を残してクィリナスも教員室から出ていった。
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作者名:白眉 | 作成日時:2022年5月5日 11時