四畳半トリップ~《秘密の部屋》結~【ハリー･ポッター】 (ページ2)

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私は人差し指に付けていたギュゲースの指輪を捻り、姿を消し、透明人間となる。

『すまん、二人とも！』

「ちょっと！」とロンとハリーの叫ぶ声が聞こえ、私は蜘蛛を踏まないように用心深く息を潜めた。

二人は恐怖に囚われ、もがきながらカシャッカシャッという音を聴く。

ロンの足がハリーと同様に宙に浮くのが見え、啼き声と吼え声で喚いているファングの声が聴こえた。

蜘蛛は透明になっている私を見つけることを諦めたのか、ハリーとロンとファングを運び、森の奥へと突き進み始める。

まずいことになったと感じながら、ローブの中で蠢く蛙を静かにさせて、息を潜め、その蜘蛛達を追う。

私はひたすらに、慎重に、ハリー達を運ぶ蜘蛛を追った。もうローブが棘だの、色んなものを掠めてボロボロになっている。

どのくらいの間、蜘蛛を追っただろうか、真っ暗闇が突然薄明かるくなり、地面を覆う木の葉の上に、蜘蛛がうじゃうじゃ居るのが見えてきた。

二人は大きな窪地に下ろされた。

そこには、見渡す限り、あらゆる角度に蜘蛛が密集していた。

ロンは、声にならない悲鳴をあげて、口を大きく叫び声の形に開けている。

私は物音を一切立てず、蜘蛛と蜘蛛の合間を縫って、ハリーとロンが下ろされた所まで忍び寄った。

そうして透明のままロンのすぐ側に膝をついてかがみ、彼の耳に煙草の煙みたいな声でつぶやいた。

『ロン』

そう私が言うと彼は縮み上がり、今にでも声を発してしまいそうな仕草をしたので、私はすぐに左手で彼の口を塞いだ。

『ロン、私、A･ブラック』と言うと塞いだ口から漏らしていた呻き声をやめて、私の声がする方にロンは目を向ける。

ロ「A？」

消え入るような声が透明な私に呼びかける。

『うん、そうだとも』

なぜ透明なのか、というまどろっこしい質問をするべきではないと判断したロンは決心したかのような目をして見せた。

私は右手で杖を持った。

しかしその杖はみんなに見てはいないようであった。

このギュゲースの指輪の凄いところは、指輪をしている本人を透明にするだけではなく、本人が触れているもの全てを透明にするといったところだろう。

そうじゃないと、杖が見えなきゃおかしいし、服も見えるはず、ましてやポケットに潜り込んだ蛙が宙を浮いて見えなきゃおかしい。

それがないということは────少なくとも、私の持論が合っているということだ。

そうしてもう片方の空いている腕で、ロンの肩にそっと手を置いた。