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それっきり私はその妙な客を相手しないでおでんを急いで食べていても、客は「ふむ」と納得しているような仕草をする。
そうして厄介なことに客はまた妙に抑揚づいた喋り方で喋り始めた。
「歴史というものはなんとも素っ気ない。次から次へと季節は流れ、歳月は待つことはない。そんな中で立派に生きてきた人間が可愛くないわけではないが、こうも忙しいと哀憐の情をかけてやるのも忍びない。
2205年以降もそれが続くのだから、益々人間には哀憐の情をかけやりたくて仕方がない。しかしだ、秋になれば神様は出雲に集まる。もちろん、末席の神様である付喪神もだ。
全く忙しいことこの上ない。神様達の論争を収め、縁結びに、歴史の管理に─────嘆かわしい、嘆かわしい」
妙な男は滔々と意味のわからないことを語り、「嘆かわしい」と言っている割には、ちっとも嘆かわしそうではない。
「そこで貴公、刀剣女士には興味がないかね？」
なんともいかがわしい、という思いを心の内に隠しながら、私は箸を置いた。
『さっきから何なんですか』
段々と暗くなってきた河原でいつも通りに店主は新聞に読み耽って、こちらの話には一向に気が付いていない。
川のせせらぎが、どこか遠くから響いてくるように眠たげで、夏の夜は心地よく、そして神秘的な深みをもっていた。
「政府だよ、貴公、私は2205年以降の政府だ」
男は少し私の方に近づいて私の顔を覗き込むような仕草をして言う。
「政府兼いわながひめ、という」
『いわながひめ？』
『そんな髭面で姫？』という言葉をグッと堪えると、男は少しムッとしたような顔をする。
「貴公、私は神様だぞ─────縁結びの神様だ、そうして君の縁を結びに来てやったのだぞ」
私はこれは新手の詐欺ではなかろうかと思い、そそくさとお金を払い、急勾配を早歩きで歩くと、男は余裕な素振りで私の後をつけてくる。
「貴公、信じてないな？ まあ良い、待ちなさい」と男は落ち着き払った声で呼び掛けた。
「私が神様だという証拠を見せてやろう」
後ろをついてきた男の方を見ると、男は黒スーツの懐から古びた和装本を取り出し、べろべろと指を舐めて頁をめくる。
ここまで指を舐めるのは本についていた埃を自ら舐めているように見えて、私は少し眉を寄せた。
そうして少しだけ近づき、その和装本の中身を見た。
長々と毛筆された文字はやけに壮大で、物々しく偉い神様だと思わずにはいられない。
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5(プロフ) - マーガレットさん» コメントありがとうございます！ 鶴丸、検討してみます！ (2022年7月18日 20時) (
レス) id: 1c6ab8c3e1 (このIDを非表示/違反報告)
マーガレット(プロフ) - とても面白かったです！続き楽しみにしてます！落ちは鶴丸がいいです！ (2022年7月9日 2時) (レス) id: d2c059af4d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：白眉 | 作成日時：2022年6月25日 20時
