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『甘い』
ぽつりと豆かなんかを一粒畳の上にほうり出したように言いながらも私は文机で頬杖をついて、素晴らしい寝所の中庭を眺める。
橙色の夕暮れの日差しが剪定された寝所中庭の木に降りかかり、色のコントラストが輝いていた。
そうして寝所中庭から自分の狭い四畳半程の寝所を見渡す。
まだ置かれている物は少なく、和泉守から貸してもらった麦わら帽子に加州が貸した手拭いが文机の隅に置かれているだけであった。
もう一口おにぎりを頬張るとまたじんわりと甘さが口の中に広がり、もはやおやつではないのかとさえ思われる。
ふと、私は鶴丸におにぎりのお礼を言えていないことが頭に浮かんだが、今思えばさほど重要なことではないように思えて、大きなおにぎり食べ終えた。
熱した油で水滴がはじけたような暑苦しい蝉の合唱が遠くの方で聞こえる。
そんな合唱を聴きながら、私は皿を持って立ち上がり、うろ覚えでありながらも厨房の方に向かった。
〇
「あぁ！ いた！」と少し大きな声を出したのは燭台切光忠である。
黒をベースとするジャージに赤の差し色は厨房に差し込む夕日に映え、黒のエプロンは身なりに拘りを示していた。
にしても、顔が良くて私は不意に『うっ』と呻き声が洩れたが、何とか平然を装って頭を傾げた。
光忠「僕、君を探していたんだ。 ほら、おやつの時間なのに大広間に来なかったし、寝所にもいなかったから」
水周りは水色と青色のタイルで敷き詰められ、さながら水面のようなもので、ガスコンロでは大きな鍋がぐつぐつと音を出し、包丁を持った彼は今、まさに野菜を切っているようである。
そうして彼の後ろの方を見れば、土間の厨房の方が見え、そこでは歌仙兼定の白い和装が見えた。
少しの間を置いて返事をしながら、私は持ってきた皿を洗い始めると、燭台切はそれを合図に野菜を切り始めた。
『鶴丸さんの落とし穴に落ちてて、それで』
「鶴さんの？ 」と思いもよらないと言いたげな燭台切は、申し訳なさそうに眉尻を下げる。
光忠「ごめんね、雷切丸くん。 鶴さんにも後で言っておくよ」
うっ、眩しいと思ったのは読者の皆様だけに話すが、やはり鋭い日差しが顔に降りかかったのではないかと疑いたくなるほど彼の顔はかっこよさで眩しかった。
燭台切の優しさに礼を言いながら、私は泡のついたスポンジを手に優しくそれを皿に当てつつ言った。
『この本丸にはボロ屋敷に繋がる変な道があるんですか？』
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5(プロフ) - マーガレットさん» コメントありがとうございます！ 鶴丸、検討してみます！ (2022年7月18日 20時) (
レス) id: 1c6ab8c3e1 (このIDを非表示/違反報告)
マーガレット(プロフ) - とても面白かったです！続き楽しみにしてます！落ちは鶴丸がいいです！ (2022年7月9日 2時) (レス) id: d2c059af4d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：白眉 | 作成日時：2022年6月25日 20時
