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鶴丸「何でもこの本丸にはボロな屋敷に繋がる道があるらしいぞ」
「そうしてそこには木の古びた扉があって、何度開けようとしても開かないらしい」と怖い話でも話すような調子で話す割に、鶴丸は直接先方に射込むようなよく徹る声で言った。
元より目の前の扉が開かないことは当然な話で、開いていたら尚更怖い─────戸締りという概念は男士達にはないのだろうか？
『そりゃ当たり前でしょ』と私は膝やおしりについた土埃を払いながら、落とし穴を埋める鶴丸を見つつ、そんなことを言った。
鶴丸「──成程な、君にとってはそうなのか」
『そうも何も、戸締まりぐらいは……』と言いかけた時、私はハッと気づいた。
元々、鶴丸国永および大半の男士は戸締まりの概念がなかったのかもしれない。
何せ古い刀様ばかりで日本的な様式である襖やら障子やらだったはずで、扉というものにそもそも接点がなくここまで来たに違いないのだ。
それなのに、なぜ昨日来たばかりの新入りが戸締まりが普通だと知っているのか。
─────怪しく見えてもおかしくはない。
いやでも単なる考えすぎか。
『それで主は知っているの？』
青天白日のごとく、あからさまに話を変えたがこうなった時に話を蒸し返すのは良くないことを知っていたのか鶴丸は額にじんわりと汗を滲ませ、明朗な声を出す。
鶴丸「うちの主はこの手の話が苦手らしいからな」
それは鶴丸の話し方が怖い話じみているから、なんて事は言えるはずもなく『驚きを求めてそうなのにね』と飄々として呟いた。
鶴丸「俺でも、この驚きはあんまり気持ちのいいものじゃないことぐらい分かるぜ」
『さっき穴に落としたくせに』
私は嫌味を言うようにして悪戯な笑みを浮かべると、これまた困ったように鶴丸は額の汗を拭った。
〇
鶴丸の件を経て、部屋に戻る頃には部屋の振り子時計はもう夕方の四時を指し、夏の夕方の明るさは砂上の淡水のような肌目のこまかさで空気に溶け込む。
日の一番長い季節である夏の夕暮れは、四時を指していても夕方という感じはせず、ひぐらしの鳴く声が聞こえ、部屋の窓からはオレンジ色に染まった薄い雲が目に入った。
夕暮れのオレンジ色の光が寝所に指し、私の部屋も当然オレンジ色となり、鶴丸が置いていった白おにぎりも当然のようにオレンジ色に見える。
へたり込むようにして文机の近くに座り込んだ私は、急激な腹の空きように驚くことなく、大きな白おにぎりを口の中に頬張った。
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5(プロフ) - マーガレットさん» コメントありがとうございます！ 鶴丸、検討してみます！ (2022年7月18日 20時) (
レス) id: 1c6ab8c3e1 (このIDを非表示/違反報告)
マーガレット(プロフ) - とても面白かったです！続き楽しみにしてます！落ちは鶴丸がいいです！ (2022年7月9日 2時) (レス) id: d2c059af4d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：白眉 | 作成日時：2022年6月25日 20時
