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「嘆かわしい、嘆かわしい」と言ったイワナガヒメは和装の風体をして、懐手をしている。
『大体、まだ一日も経ってないじゃないか。 調子はどうって言われても─────』
「どうせ貴公のことだから、打ち解けてないだろうと思ってな。 少し打ち解けさせようと思って」
そう言ったイワナガヒメは懐から手を出して、茄子のようにしゃくれあがった顎を撫でる。
『打ち解けさせる？』と言葉を繰り返すと「そうだ」とイワナガヒメは応酬した。
「私は貴公に伝え忘れておってな、貴公─────制限時間があるのだ。 縁結びは。 神無月までに縁を結びたい男士の名前を言ってもらわないと……」
丁度、昼になったのだろうか。
本丸の方から昼餉を呼びかける鐘と声がこだましている。
私はそんなキンキンと響くような鐘の声とともにイワナガヒメの声を聞いていた。
『神無月って、今、八月だよね。 ってことはあと二ヶ月？』
「貴公のためなら、来年の神無月まで待ってやらんこともない」と目の前の男は口の端を奇妙な様子であげた。
それが何だか嫌な胸騒ぎがする。
「それまでに男士を決めておけ」
『決めておけって言ったって……』と言った私は怪訝そうに眉を顰める。
そう呟くとイワナガヒメは片眉を少しだけ上げて、くるりとその場から姿を消し、私は小さく『はあ？』と洩らした。
すると突然、大きな衝撃が後ろからかかる。
その反動で私は近くの池に体が向かっていることを理解するのに数秒の時間を要した。
そうして後ろから聞こえる声はやけに無邪気な子供のような声だ。
「どうだ？ 新入り、驚いたか？」と鶴のような一声が池に落ちていく私に投げかけられた。
〇
加州「ちょっと待って、どういうこと？ 」
『落とされた』と私は大広間で昼餉を食べていた加州に不機嫌そうな顔を露わにして、頬を少しだけ膨らませた。
加州「誰に？」
『ん』と声を出しながら、少し体をズラして、私の後ろから申し訳なさそうな声で「わざとではないんだ」と弁明の声を出す鶴丸国永がいた。
『池に落とされた』
鶴丸「いや、竹林の方に新入りがいて、打ち解けようと思って驚かせただけで─────」
『溺れかけた』
「いや、これは事故で」と言う鶴丸を遮って、加州は「どうやら嫌われているみたいだけど」と手拭いを私に渡す。
私はありがたくその手拭いを受け取って、大広間に来るまでにある程度拭いていた顔をもう一度拭う。
華やかな香りが鼻を摩る。
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5(プロフ) - マーガレットさん» コメントありがとうございます！ 鶴丸、検討してみます！ (2022年7月18日 20時) (
レス) id: 1c6ab8c3e1 (このIDを非表示/違反報告)
マーガレット(プロフ) - とても面白かったです！続き楽しみにしてます！落ちは鶴丸がいいです！ (2022年7月9日 2時) (レス) id: d2c059af4d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：白眉 | 作成日時：2022年6月25日 20時
