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その赤い瞳の先の方は道場に向いており、その入口は妙にごちゃごちゃとして見え、何やら夜逃げのような荷物を抱えた男士が看板を私たちの方に見せびらかしている。
私はその看板の文字を左から右へと読み上げた。
『北辰一刀流の稽古─────あり』
そうして目を看板からそれを持つ男士へとずらすと、少年のような伸びやかなはにかみを見せ、チラチラと私の方ばかりを見ている陸奥守吉行がいた。
加州「待って、なにあれ？」
加州は依然とこちらにアピールを続ける陸奥守を呆れたような目をして、困ったような顔をしている。
「今なら肩たたき券つきじゃ」と明朗な声は陸奥守のもので、やはりこちらに言っているらしい。
私は半ば笑みを抑えて、唇がウジウジと動いていたかもしれないが、呆れた顔で見る加州の隣では笑ってはいけないものだと思われた。
加州「あー、無視無視。 畑はこっち─────」
「なんと今なら更に茶菓子付きぜよ」と伸びるような声が道場に背を向けた私と加州に投げかけられる。
すると加州は軽やかに振り向いて、呆れたように肩をすくめる仕草をし、サッと前を向く。
『あれって？』
「陸奥守吉行って言う奴で、北辰一刀流の稽古がしたいといきなりし出すの」と言った加州は思い出したと言わんばりの顔をしている。
加州「今は道場に行かない方がいいよ、無理やり稽古付けさせられるから。 一応、陸奥守はあんたのこと気になっているみたいだから、話しかけてやって」
そういう加州の横顔は、さっきの陸奥守のように少年のような伸びやかなはにかみを見せていた。
〇
暑苦しい夏の日差しは夏野菜を照らしだし、ツヤツヤに光った赤いトマトに紫の茄子─────
茄子と言えば、どこか時の政府で私と雷切丸の縁を繋げたイワナガヒメに似ていて少し茄子には腹が立つ。
しゃくれあがった顎に無精髭がちらほら、茄子みたいな顔で髪の毛は乱雑な方向に伸びて、それで──
「おお、加州」とはっきりとした声が現実と妄想との間にいた私を引き戻し、肥料の匂いで私を包み込む。
加州「兼さん、今日は新入りに一つ手本でも見せてやってよ」
そうして加州はクイッと私を親指で指した。
私が二言三言挨拶をすると、作業をしていた和泉守が立ち上がり、てらつく汗を拭う。
和泉守「ああ、あんたか───確かAだな？ よーし、いっちょ手本を見せてやろうじゃねーか」
そういう和泉守の顔にはよく見たら肥料がこびりついているように見えた。
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5(プロフ) - マーガレットさん» コメントありがとうございます！ 鶴丸、検討してみます！ (2022年7月18日 20時) (
レス) id: 1c6ab8c3e1 (このIDを非表示/違反報告)
マーガレット(プロフ) - とても面白かったです！続き楽しみにしてます！落ちは鶴丸がいいです！ (2022年7月9日 2時) (レス) id: d2c059af4d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：白眉 | 作成日時：2022年6月25日 20時
