１8 ページ18
私が立ち上がるとまた例の通り、そそくさと歩き出すけれどその歩くスピードは前の時よりも遅い。
廊下へと出て右に曲がり、まっすぐと歩く山姥切について行く。
何気なく面倒見がいいと言うか、慣れていると言うか。きっと新しく来た男士を何回も案内をしたんだろう。
不意に覗き見たその行動に私は頬を綻ばせ、ゆらゆらと揺れるその白い布を見ながら、厨房を過ぎたあたり、山姥切はサッとこちらへと振り返った。
「酒は呑むな」と言った山姥切は少し眉を寄せた。
何やら酒で面倒なことがあったのか、顔には、ため息を押し殺すような表情が滲んでいる。
山姥切「特に──大般若と鶯丸が勧めても酒は呑むな」
そうして容姿を事細かに教えた山姥切はやっぱり以前にも面倒事があったようで、顔がだんだん険しくなり、眉はより寄せられる。
「まだある」と切り出した山姥切は、これこそがいちばん重要のことであるように、瞳を少し見開いた。
山姥切「いいか、日本号や次郎太刀の持っている酒は間違っても呑むなよ」
『分かりました』と少々業務的な返事をして、大広間横の廊下を奥の方に行くと、もう中からガヤガヤとした声が聞こえる。
〇
───もう一度、選択をやり直せと言われればやり直すことは些か吝かではない！
せめて数時間前からでも！
数時間前───
挨拶を終え、盛大な拍手と迎え入れる声に安堵しながら、上座に座る主に一礼して、上座の二番目の席に腰を下ろし、上座の一番目、言うなれば私の向かい側に山姥切が座った。
お腹が空いていた私は煌びやかな食事を口に頬張る。
味付けはさっぱりしていてその上米の炊き方が親切で……そんな説明をするよりも要するに食べるとうまい。
筆舌に尽くし難い程の美味しさが一挙に口の中に押し寄せ、私はにこやかな笑みを浮かべて、味を噛み締めていた時、隣にいた者がチョンチョンと私の肩を触った。
フッと触られた方を見ると線の細いが意外としっかりとした体格に濃ゆくどこか淡い緑の瞳が私を写していた。
そんな緑の世界で私が私を見つめ返している。
『なんですか？』とたべ終わりかけの頃、私は頭を傾げて鶯丸の目をちゃんと見返して言った。
よく平静を装って言えたと心の中でグッとガッツポーズをしたい気持ちに駆られたが何とか耐える。
「ふむ」と少し口角を上げた彼の片手には何やら大きなものを持っていた。
鶯丸「酒でも飲まんか？」
不意の言葉に私は箸を落としかけた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 106人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「刀剣乱舞」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
5(プロフ) - マーガレットさん» コメントありがとうございます！ 鶴丸、検討してみます！ (2022年7月18日 20時) (
レス) id: 1c6ab8c3e1 (このIDを非表示/違反報告)
マーガレット(プロフ) - とても面白かったです！続き楽しみにしてます！落ちは鶴丸がいいです！ (2022年7月9日 2時) (レス) id: d2c059af4d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：白眉 | 作成日時：2022年6月25日 20時
