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「そうか」とだけ呟いた山姥切は主と私を遮り、何気なく本丸に帰るよう仕向けたようだった。
山姥切「早く帰るぞ、本丸の奴らが待っている」
あくまで主をだ、と言いたげな視線を投げかけられて、私は『へいへい』と小さく返事をしながら、けんもほろろな思いが襲う。
多分初期刀なんだろうな、と主と山姥切の後ろを歩きながら、小さな背中と大きな背中を見てはそんなことを思う。
今さっきまでの緊張は解け、自分のあるべき人生の可能性を思えば灰色になるけれど、主と山姥切を見るとそんなことも忘れてしまいそうだ。
きっと山姥切は心配なんだろう。
責任感があって、変な刀剣が政府から送られるわ、しかもその刀剣は付喪神っぽくも人間っぽくもないってなったら尚更だよな。
〇
本丸と言っても場所は多種多様なところに存在しているようで、主の本丸は少し都市部に近いところに入口があるらしい。
らしい、というのは確証がないからだ。
主と山姥切の会話を聞く限りそうだと伺える。
鬱蒼と生い茂る木々を抜けると伏見稲荷大社の千本鳥居の中腹あたりに出て、そこから千本鳥居を横断する。
周りは私達三人しかいない。
それはもう日が暮れかかっているからか、それとも人払いされたのかよく分からないが人気のない鳥居は何だか不気味に思える。
私は二人の後ろ姿を見ては、チラチラと他の方ばかりを見て、何回か木にぶつかりかけたが、その度に何か攻撃を仕掛けたのではないかと山姥切の眼光が飛んできた。
そうして何もないと分かると自然と主の方に目をやっていた。
そんな二人の影が、往来へ落ちる木々の影までも心持ちか長くなった。
空を見あげれば、西空の雲が灰色とオレンジ色のまだら模様に染まっている。
まだ明るさを残す上空とは対照的に、闇色に染まりつつある地上の街並み。
あれ、こんなに綺麗だったんだ。
行き交う行人と活気に溢れた声が少し下の方から聞こえ、私は世界はこうだったのかと自問自答する。
ふと止まっていた足は自然と街の方に向いていた。
すると突然「おい」という冷ややかな声と共に肩をグイッと後ろに引っ張られ、私は少しよろけながらも何とか耐える。
そうしてバランスを取り戻し、振り返れば山姥切が何か言いたげな目で私を見下ろしていた。
『あっ、ごめん』と咄嗟に出た言葉に私は口を手で塞いだ。
やべ、勢い余ってタメ口が。
相手は神様なんだぞ、まだ会って数時間の神様なんだぞ。
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5(プロフ) - マーガレットさん» コメントありがとうございます！ 鶴丸、検討してみます！ (2022年7月18日 20時) (
レス) id: 1c6ab8c3e1 (このIDを非表示/違反報告)
マーガレット(プロフ) - とても面白かったです！続き楽しみにしてます！落ちは鶴丸がいいです！ (2022年7月9日 2時) (レス) id: d2c059af4d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：白眉 | 作成日時：2022年6月25日 20時
